透析を始める基準とタイミング
人工透析まめ知識、今回は透析を始めるの基準とタイミングについての話題です。
主治医から「もうすぐで人工透析が必要になるかもしれません」と言われて不安を感じている方もいるでしょう。
「またけっこう元気だし、食欲もあるし、本当に透析が必要になるの?」と疑問を感じている方も少なくないかと思います。
そこで今回は、「いつから透析を始めるの?」という疑問に腎臓・透析専門医がお答えします。
1. 腎臓の働きが弱ってくるとどうなる?
「腎臓病まめ知識①」の繰り返しになってしまいますが、腎臓は体の中の「おそうじ屋さん」のような役割をしています。
不要な水分や老廃物を尿として体の外に出したり、体のバランスを整えたりしています。
ところが、腎臓の働きがだんだん弱ってくると、体の中にゴミがたまってしまい、むくみ、疲れやすさ、食欲の低下、息切れ、かゆみなど、さまざまな不調が現れてきます。
これらは、腎臓の働きが不十分なサインであり、これらの症状が「あるか、ないか」が、透析を始める基準の一つになります。
2. 透析を始めるのはどんなとき?
透析を始めるタイミングは、「腎臓の機能がかなり低下し、体に悪影響が出てきたとき」です。
具体的には、血液検査の数値(特にクレアチニンやeGFR)や、むくみ・食欲不振・吐き気・倦怠感などの症状を見て、医師が総合的に判断します。
検査の数値だけでなく、「日常生活にどれだけ支障が出ているか」も大切な判断材料です。
無理に我慢せず、症状が出たら早めに相談しましょう。
3. よくある誤解:「数値が下がったらすぐ透析?」
「数値が◯◯以下になったら透析開始」という決まりはありません。
人によって体の状態は違うため、同じ数値でも透析が必要な人もいれば、まだ必要ない人もいます。
透析を早く始めすぎても、遅すぎても体に負担がかかることがあります。
そのため、定期的に検査を受けながら、タイミングを見極めることがとても大切です。
ただし、一般的にはeGFRが10未満になってくると、「いつ透析を始めてもおかしくない」状態といえます。
4.透析を始めたらやめられないの?
この質問は患者さんからよく聞かれることの一つです。
この考え方には多少の誤解があるようです。
人工透析は「人工透析まめ知識①」でもご紹介した通り、「自分の腎臓の代わり」をする治療です。
つまり、「透析を始めなくてはいけない状態」とは、「自分の腎臓は働いていないため、その代わりを透析でまかなわなくてはいけない状態」とも言えます。
そのような状態で、自分の腎臓の代わりである「透析」をもし止めてしまうと、命にかかわっきてしまうのです。
見方を変えると、「透析をやめられない状態」なのではなく、「透析を止めたら命にかかわる状態」といえるのです。
医師とよく相談して納得のいくスタートを
透析は、一度始めると長く続けていく治療です。
不安も多いと思いますが、医師としっかり話し合い、自分に合ったタイミングで安心して始められることが大切です。
「そろそろかな?」「体がつらくなってきたかも」と感じたら、遠慮せずに医師にご相談ください。
早めの相談が、良いスタートにつながります。
当院でも透析に関するご相談を受け付けております。
どんな小さな悩みでもご不安なことがありましたら、いつでもご連絡ください。