第54回:ガザ地区の透析患者さんの現状
私たち透析治療を提供している医療従事者にとって、透析患者さんが継続して透析を受けられる環境を作ることは、最も大切な使命の一つです。

ガザ地区(CNN newsより)
痛ましい紛争が続くガザ地区では、透析患者さんはどうしているのでしょう?
今回はガザ地区の紛争下における透析患者さんの状況を調査した国際研究の内容をご紹介します。
ガザ地区の透析患者さん像

透析を受けるガザ地区の患者さん(AFPBB newsより)
・ 平均年齢:52.3際
・ 男性が57.7%
・ 透析歴は、3.4年(中央値)
・ 通常では、1回3時間の透析を週3回受けている
透析環境の状況
・ 調査時点で、ガザ地区における透析患者数は、2023年の1,100人から629人に減少。
・ 透析センターは7カ所から4カ所に減少。
・ 4カ所の透析センターのうち、2カ所は1日20時間稼働。
・ 84.6%の患者が避難生活を強いられ、61.2%の患者の家は全壊。
・ 約半数の患者さんは透析をうけるのが週2回以下
・ 41.5%の患者が透析中断を経験
・ 透析中断期間は平均8.5日間
まとめ
この研究は、戦争が透析患者さんにどれほど過酷な影響を与えるかを示しています。
日本に住む私たちにとっては想像しにくい状況ですが、「透析治療が提供できる」という日常が、いかに貴重であるかを改めて考えさせられます。
医療インフラの維持、災害や非常時への備え、そして世界中の透析患者さんへの支援のあり方を考えるきっかけとなる研究ですね。
※このコラムは、2025年に発表されたBMC Nephrology掲載論文「Quality of life and access to healthcare among hemodialysis patients during wartime: crosssectional insights from Gaza」の内容をもとに、一般の方向けに私見も含めて解説したものです。