人工透析の仕組みと目的
人工透析まめ知識は、今回はまず基本、人工透析の仕組みについての話題です。
「人工透析(じんこうとうせき)」と聞いて、どんなイメージが浮かびますか?
「腎臓が悪いひとのための治療?」「腎臓を良くするための治療?」など、なんとなく知っていても詳しくは知らない方も多いかもしれません。
今回は、そんな人工透析の仕組みと目的について腎臓・透析専門医がご紹介します。
1. 腎臓ってどんな働きをしているの?
腎臓(じんぞう)は、背中の左右にある豆のような形の臓器です。
血液をきれいにして、体にたまったいらない水分やゴミをおしっことして出す働きをしています。
体の“おそうじ係”のような存在です。
腎臓ってどんな臓器?その働きと重要性
2. 腎臓がうまく働かなくなると?
腎臓が弱ると、体に老廃物(尿毒素)や余分な水分がたまってしまいます。
自分の腎臓が多少弱っていても無理して頑張ることで目立った症状は出現しませんが、
だんだん悪くなっていくと、むくみ、息苦しさ、だるさ、かゆみ、食欲がなくなるなど、さまざまな不調が出てきます。
このような症状が出ている状態のことを「尿毒症」といい、人工透析が必要な状態といえます。
もし「尿毒症」を放っておくと、命にかかわることがあります。
3. 人工透析ってなにをするの?
人工透析は、腎臓の代わりに血液をきれいにする治療です。
体の外へ血液を取り出し、人工腎臓のような機械を使って、血液の中の「よごれ」や「余分な水分」を取り除きます。
そして、きれいになった血液を体に戻します。
つまり、人工透析は「腎臓に代わって体をきれいにする」治療といえます。
しかし人工透析によって「腎臓を良くする」ことはできません。
現代医学においては、腎臓を良くする治療にまだ限界があり、最終的には「腎臓移植」がその解決策となっています。
4. どんなふうに治療するの?
透析はふつう、週に3回、1回あたり約4時間行います。
ベッドやリクライニングチェアに横になりながら治療を受けます。
また、血液を体から外へ出入りさせる必要があるため、その出入口(一般的はシャント※と呼ばれます)を作る必要があります。
※シャントについては⇒ こちらをクリック
シャント血管に出口用1本、入口用1本、合計2本の針を刺して、チューブをつなぎ、ゆっくり血液を機械に送って、また体に戻す仕組みです。
針を刺すときは、痛みを多少感じますが、治療中の痛みはほとんどありません。
5. 透析でできること・できないこと
人工透析は、毎日24時間働いている本当の腎臓とまったく同じことはできませんが、「体調を安定させる」「普段の生活を続ける」ためにとても役立ちます。
きちんと通って、食事や水分に気をつければ、仕事や趣味を続けている方もたくさんいます。
6. 最後に
「人工透析」という言葉に、不安を感じる方もいるかもしれません。
でも、治療のしくみや目的を知ることで、少し安心できることもあります。
毎日が少しでも心地よく続けられるように、このコラムがそのお手伝いになれば幸いです。
当院でも透析に関するご相談を随時受け付けております。
ご不安なことがありましたら、いつでもご連絡ください。