めまいやふらつき… 血圧低下のヒミツと対策
透析のあとに「めまいがする」「立ち上がるとふらっとする」「気分が悪くなる」…そんな経験はありませんか?
一般的に「貧血症状」といわれるものです。
でも実はこれ、「貧血」による症状ではなく、「血圧の低下(低血圧)」が関係していることがほとんどなのです。
今回は、透析と血圧低下の関係や、その対策についてわかりやすくお話しします。
1.「貧血症状」って本当に貧血なの?
「たちくらみ」や「めまい」など、「ふらっとする」症状は、よく「貧血症状」といわれます。
実は、これらの症状が本当の「貧血」によって起こることは、「ごくマレ」です。
「貧血」は、血液中で主に酸素を運ぶ役割を担う「赤血球」の濃度が低くなる(うすまる)ことをいいます。
この「貧血」、ほとんどは「ゆっくり」進むので、身体が知らず知らず「貧血状態」に順応してしまい、自覚症状として感じることはすくないのです。
一方、突然の大量出血などで急激に血液が失われた場合には、身体が順応できていないので、「ふらつき」など自覚症状を感じることがあります。
でもそんなときは、「ふらつき」以外の他の体調不良が出ていることがほとんどです。
つまり、「なんだかわからないけど、”たちくらみ”や、”めまい”がする」といった症状は、本当の貧血とあまり関係ことが多いのです。
では、これらの症状が何から来るかというと、(透析患者さんでは特に)低血圧(血圧低下)が原因のことがほとんどなのです。
2.透析と血圧の関係って?
人工透析は、腎臓の代わりに体の中の余分な水分や老廃物を取り除く治療です。
本来腎臓が24時間かけてやっている仕事を、約4時間程度の時間で行います。
そのため、短い時間で一気に体からたくさんの水分を引き出す(除水)必要があるのです。
この「除水」が血圧低下の一番の原因となります。
① 血液の中の水分が一気に減る
⇒ ② 血液量が減って、心臓が全身に血液を送り出す力が相対的に下がってしまう
⇒ ③ 結果として「血圧」が下がってしまう
このようなとき、若い方や元気な方は、血管を締めて血圧を保つような神経調整が働いてくれることで、血圧がそれほど下がらずに済みます。
しかし、糖尿病をお持ちの方や高齢の方、心臓に負担がある方は、このような調節機能が上手く働きにくいので、血圧が思った以上に下がってしまうことが多くあるのです。
3.こんな症状があったら要注意!低血圧のサイン
透析後に以下のような症状がある場合、低血圧が関係している可能性が高いといえます。
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めまい・ふらつき
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立ちくらみ
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吐き気、冷や汗
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意識がぼんやりする
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急に気分が悪くなる
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動けなくなるほどのだるさ
中には、血圧が急激に下がって意識を失ってしまう「失神」につながるケースもあるので注意が必要です。
4.なぜ血圧が下がる?主な原因を探ろう
低血圧を引き起こす原因はひとつではありません。
以下のように、さまざまな要因が重なっていることが多いのです。
1) 除水量が多すぎる
透析間の体重増加が多いと、透析中に引かなければ行けない水分の量(除水量)も多くなります。
一気に水を体から引くと、血圧を保とうとする体の調節機能が追いつかず、血圧がガクッと下がってしまいます。
また、「ドライウェイト(体に余分な水分がない理想の体重)」の設定が合っていない場合にも起こりやすくなります。
2) 食事のタイミング
透析前に食事をとると、消化のために血液が胃腸に集中し、脳や心臓への血流が減って血圧が下がることがあります。
3) 血流量スピードが速い
透析中に体から血液を取り出すペースが速すぎると、体がついていけずに急激な血圧変動が起こることがあります。
4) 心臓機能の低下
心臓は、全身に血液を送るポンプの働きをしています。
その機能が落ちてしまうと、血液がうまく送れなくなり、血圧が下がりやすくなっていまいます。
5) 自律神経のバランスの乱れ
特に高齢の方や糖尿病のある方では、血圧をコントロールする神経がうまく働かず、ふらつきやめまいが起きやすくなります。
5.低血圧を防ぐには?できることいろいろ
血圧低下を防ぐには、「原因に合わせた対策」が大切です。
主な工夫をいくつか紹介します。
● 除水量の見直し
「最近ふらつきやすい」と感じたら、まず除水量を見直してみましょう。
まずは、ご自身の透析間の体重増加が適正なのかを確認することが大切です。
一般的に適切な体重増加量は、透析が中2日空いた週明けの時点で「ドライウェイトの5%以内」といわれています。
そのほか、ドライウェイトの再設定や、透析時間を延ばしてゆっくり除水する方法もあります。
● 食事は透析前ではなく後に
透析前にしっかり食べると血圧が下がりやすくなります。
可能であれば、軽食にとどめるか、透析後にしっかり食べるようにしましょう。
また、透析直後は、体の栄養吸収効率が上がっているといわれており、栄養面からもお勧めです。
● 足を上げる
透析中に血圧が下がったときは、リクライニングを倒して足を高くし、上半身に血を集めることで改善することがあります。
● 降圧剤の調整
血圧を下げる薬(降圧薬)を飲んでいる方は、服用タイミングを見直すこともあります。
透析当日の朝に飲むのではなく、透析後に変えるなどの工夫も可能です(医師と相談が必要です)。
6.まずは、家でも血圧測定を!
低血圧は、ドライウェイトや降圧剤の調整、水分量の調整で上手くコントロールできることがほとんどです。
血圧は、透析中だけでなく、自宅でどうなのかも大切になります。
まず、自宅でも血圧測定して記録していただき、その経過を見ながら、調整していくことでうまくコントロールできます。
透析後の「ふらつき」など、低血圧症状でお悩みの方は、まずは自宅で血圧測定して、その記録をスタッフに見せてみましょう。
ちなみに、自宅で血圧測定するならば、朝・夕の1日2回程度がおすすめです。