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第44回:人工甘味料は控えめに! ~WHOからの勧告~

[2023.08.13]

ゼロカロリーをうたった清涼飲料水やお菓子など、選んでしまうことありませんか?

 

ちなみに私も、”ゼロカロリー”とそうでないものが、並んでいたら、思わず”ゼロカロリー”を選んでしまいます。

 

 

このゼロカロリー食品には、”人工甘味料”と呼ばれる砂糖の代わりが入っていることはよくご存知かと思います。

 

最近、この「人工甘味料が、体に良くないかもしれない」と言われるようになってきました。

WHOからの見解・勧告

 

とくに、2023年7月にWHOから「”アスパルテーム”という人工甘味料に発がん性の可能性(特に肝臓がん)がある」という見解が出され、話題になりました

 

ただし、これはまだ科学者たちの中でも一定の見解が得られていないものです。

 

一方で、その少し前の2023年5月にもWHOから、人工甘味料に関する勧告が発表されていたのです。

 

そにれよると、

 

① 砂糖の代わりに人工甘味料を使っても、長期的にはダイエット効果にならない

 

② 人工甘味料を長期に摂取していると、健康上望ましくない影響が出る可能性がある

 

と書いてあります。

 

ちなみにこの勧告は、歯磨き粉、スキンクリーム、医薬品などの人工糖分を含むパーソナルケア製品や衛生製品には及ばないという。また、砂糖自体に由来する低カロリーの砂糖や糖アルコールも含まれません。

 

特に②に関して、ネイチャー誌に掲載された最近の研究結果をご紹介します。

 

人工甘味料 "エリスリトール”とは?

 

この研究では、”エリスリトール”という人工甘味料について調べています。

 

”エリスリトール”は、果物や野菜のもごく少量含まれているそうですが、人工甘味料として添加される場合には、自然のレベルよりも1000倍程度まで濃縮されるのだそうです。

 

エリスリトールは、体の中でほとんど代謝れず、尿中として排泄されます。

 

そのため、”ゼロカロリー”または”非栄養”甘味料、さらには”天然”甘味料としてうたわれ、人気が急速に高まっているそうです。

 

エリスリトールによって血液がネバネバ!?

今回の研究は、米国とヨーロッパ約4,000人に対して、約3年間に血液中のエリスリトール濃度と脳卒中・心臓発作との関連性について調べました。

 

ちなみにこの約4,000人の参加者、年齢は55-72歳程度で、糖尿病(約22%)や高血圧(約72%)などの持病を持っている人が多く、また心血管疾患も7割の人が持っているという、元々かなりリスクが高い人たちでした。

 

結果です。

 

グラフ1:Nature Medicine volume 29, pages710–718 (2023)より引用

血液中のエリスリトール濃度によって、4つのカテゴリに分けて、各カテゴリの人たちの予後を調べました。

 

すると、血液中の濃度が最も高いカテゴリの人たちは、最も低い人たちと比べると、約3倍近い脳卒中や心臓発作の危険度であったのです(グラフ1)。

 

さらに、このエリスリトールが脳卒中や心臓発作の発症にどう関係していたのかをくわしくみるため、血液にエリスリトールを加えることで、何が起きているのかを実験しています。

 

グラフ2:Nature Medicine volume 29, pages710–718 (2023)より引用

すると、エリスリトールを血液加えると、血液の一成分である”血小板”の粘着力が上がったのです(グラフ2)。

 

※血小板:血液を固める作用を持つもので、怪我したときなどに「血を止める」ための役割があります。

この粘着力が上がると、血管の中で”血栓”という血液の小さな塊が作られてしまい、それが詰まると脳梗塞や心筋梗塞と呼ばれる疾患の原因となるわけです。

 

では、実際にエリスリトールを飲んだら、どれくらいの間、体の中に残るのでしょう?

 

グラフ3:Nature Medicine volume 29, pages710–718 (2023)より引用

今回の研究では、人工甘味料入りアイスクリーム約500ml弱(1パイント)または、人工甘味料入り清涼飲料1缶を、健康なヒトが摂取した場合の血液中のエリスリトール濃度の経時的変化を見ています。

 

その結果、摂取後30分から2日以上、エリスリトールは血液中に高い値のまま残っており、さらにその値が血小板の活動性を高めるのに必要な値をはるかに上回っていたままの状態だったそうです。

 

つまり健康な人でも、人工甘味料入りのアイスクリームや清涼飲料水を摂取すると、血栓ができやすくなるレベルまで血液内にエリスリトールが数日間残存していたということです。

 

ということは…

 

先ほど書いた通り、エリスリトールは尿中に排泄されることを考えると、腎臓が悪い人の場合には、尿からの排泄機能が落ちているため、さらに長くエリスリトールが体内に残ってしまう可能性が考えられます。

 

腎臓が悪い人は、そういった意味でも特に注意が必要かもしれません。

 

まとめ

今回の研究結果をまとめます。

1.中高年で、心血管系疾患のリスクが高い人の場合、エリスリトールのとりすぎは危険である

 

2.エリスリトールは、血液内の”血小板”を活性化させて、血栓を作る可能性がある

 

3.エリスリトールは摂取すると、数日間体内に高い濃度で残ってしまう(特に腎臓が悪い人は要注意かもしれない)

 

エリスリトールは、以前の研究結果から安全性に問題はないということで使われているのですが、これらは長くても 4 週間程度の摂取による結果でした。

 

今回の研究結果は、3年間という比較的長い期間でみていることで、インパクトのある研究結果だったようです。

 

ただ、人工甘味料の使用が 色々な健康への悪影響と関連している91011131432333435が、そうでない研究もある3637と報告しているの

も事実です。

 

結局、食事からの人工甘味料の摂取量を確実に測定することが難しいため、なかなか確証が得られていないのが現状のようです。

 

ただ、WHOが勧告しているように、「ダイエット目的の人工甘味料を摂りすぎ」はやめたほうがよさそうですね。

 

※ 最初にご紹介した”アスパルテーム”の見解では、「体重70kgの人であれば、ダイエットソフトドリンクを12缶以上飲んだ場合」の発がん性リスクが上がるとされいます。

 

 

 

 

 

 

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