たんぱく尿・尿潜血とは?放置してはいけないサイン
腎臓病のまめ知識、今回は尿検査の中でも特に「たんぱく尿」「尿潜血」についての話題です。
健診や病院の検査で、「たんぱく尿が出ています」「尿潜血があります」と言われたことはありませんか?
そのとき「とくに症状もないし、気にしなくていいか」と思ってしまうかもしれません。
でも、これらは体からの大事なサイン。
とくに腎臓の不調を早期に知らせてくれる“見えない警報”です。
今回は、その意味と注意すべきポイントを腎臓・透析専門医がなるべく簡単に解説します。
1.「たんぱく尿」とは? 体の大切な成分が漏れているサイン
たんぱく尿とは、文字通り、尿の中に「たんぱく質」が出てきている状態です。
たんぱく質は、筋肉や内臓、血液などをつくる大切な栄養素で、血液の中に多く含まれています。
本来、健康な腎臓は、体に必要なたんぱく質を“体から漏れ出ない(ろ過しない)”ようにして、ちゃんと体内にとどめておく働きがあります。
ところが、腎臓の中にある「糸球体(しきゅうたい)」という細かいフィルターが傷ついたり、目が荒くなったりすると、
たんぱく質がそこをすり抜けて、尿の中に出てきてしまうのです。
例えるなら、コーヒーフィルターが破れて、本来カップに落ちないはずのコーヒー豆が混じってしまっている状態と同じです。
これが「たんぱく尿陽性」と言われる状態です。
つまりたんぱく尿は、「腎臓での傷つき具合」を示しています。
たんぱく尿が出る原因には、腎臓特有の病気(慢性腎炎やネフローゼ症候群など)だけでなく、糖尿病などの生活習慣病も関係してきます。
また、運動後や発熱時など、一時的にたんぱく尿が出ることもあります。
一時的なものであれば問題ありませんが、それが繰り返し続く場合は注意が必要です。
一見、見た目ではわからなくても、検査で異常が見つかれば、腎臓の働きが少しずつ落ちてくる可能性があるサインかもしれません。
症状がないからと放置せず、早めに腎臓のくわしい検査を受けることが、進行を防ぐカギになります。
2.「尿潜血」とは? 見えないけれど血が混じっている状態
尿潜血(にょうせんけつ)とは、尿の中に血液(赤血球)が混じっている状態ですが、目で見ただけではわからない「かくれた血尿」です。
ちなみに、見た目も赤い血尿は、「肉眼的血尿」と呼ばれます。
“潜んでいる血”と書くように、見た目には普通の尿に見えるため、検査をしないと気づきません。
潜血があるということは、どこかで血管が傷ついていたり、炎症や結石(尿の通り道にできる石)が起きていたりする可能性があります。
原因はさまざまで、腎臓そのものの病気(腎炎、IgA腎症など)のほか、尿路の感染症、尿管や膀胱の異常、あるいは前立腺のトラブルなども考えられます。
また、激しい運動のあとや月経時、痩せ型体型の人でも一時的に尿潜血が出ることもあります。
何度も繰り返す場合ももちろん、同時にたんぱく尿も出ている場合は、特に注意が必要です。
「たんぱく尿+尿潜血」は、腎臓の病気の可能性が高い、非常に重要なサインだからです。
潜血があるだけでは、体にすぐ不調を感じることはほとんどありません。
だからこそ、「症状がない=大丈夫」と思い込まず、きちんと医師に相談して、必要な検査を受けることが大切です。
3.早めの受診と定期的な検査がカギ
「軽い数値だから」と放置せず、一度きちんと腎臓の状態を調べることが大切です。
血液検査や画像検査などを組み合わせて、腎臓にどんな変化があるかを確認することで、必要な対策を早めにとることができます。
また、年1回の健診だけでなく、気になることがあれば早めに医師に相談しましょう。
4.生活習慣の見直しも予防につながる
腎臓を守るためには、塩分を控えた食事、適度な運動、そして血圧や血糖のコントロールが大切です。
生活習慣を整えることは、たんぱく尿や尿潜血の予防にもつながります。
日々の小さな積み重ねが、腎臓の健康を守る第一歩です。
当院は、腎臓専門医が診療いたしますので、ご不安なことがありましたらいつでもご相談ください。