シャントPTAってなに? ~透析を安全に続けるための「血管の修理」~
人工透析のまめ知識、今回は人工透析に欠かせない「シャント」の治療に関する話題です。
人工透析を安全に続けるためには、シャントという血管の通り道がとても重要です。
しかし、使い続けるうちに血管が細くなったり、詰まってしまうことがあります。
今回は、そのときに行う「シャントPTA」という処置について、腎臓・透析専門医がわかりやすくご紹介します。
1.シャントがつまると、透析ができなくなる?
人工透析をするには、「シャント」という特別な血管(動脈と静脈をつないだ通り道)が必要です。
このシャントから血液を取り出し、きれいにしてまた体に戻します。
でも、シャントの中が細くなったり、血液の塊(血栓)ができてつまったりすると、透析がうまくいかなくなります。
血流が悪くなると、十分な血液を体から出し入れできなくなり、透析ができなかったりするので、注意が必要です。
2.そんなときに行うのが「シャントPTA」
シャントPTA※(経皮的血管形成術)は、シャントの中の細くなった部分を「風船のついた細い管(バルーンカテーテル)」で広げて、血液の流れをよくする処置です。
※この「PTA」は、Percutaneous Transluminal Angioplastyという英語の略語です。
この処置を行うことでシャントの流れが回復して、また十分な透析ができるようになります。
つまり、「シャントPTA」は、調子が悪くなった「血管の修理」とも言えます。
3.シャントPTAの流れ(おおまかな手順)
① 検査(シャントエコーや造影)で原因をチェック
血流が悪くなった原因を調べるため、まずは超音波検査(エコー)や造影剤を使った検査で、血管のどこが細くなっているかを確認します。
② カテーテルを血管に入れる
処置は局所麻酔をしながら行います。
まず、細くなった部分に向けて、腕の血管から細いチューブ(ガイドワイヤー)を通していきます。
その際、ガイドワイヤーの出入り口に使う針を1本を指します。
③ バルーンで血管をふくらませる
先ほど入れたガイドワイヤーに沿って、風船(バルーン)がついたカテーテルを入れ、細くなった部分まで持っていきます。
血管の内側から風船を何回かふくらませて、狭くなった血管を広げます。
もしつまった原因になる血液の塊(血栓)があれば、それを溶かしたり、取り除くことも行います。
④ 通りがよくなったことを確認して終了
最後にもう一度エコーや造影で血流を確認し、問題がなければ処置は完了です。
通常、1時間以内で終わることが多いです。
4.処置は日帰りのことが多いです
シャントPTAは、局所麻酔で短時間で行うことができる体への負担が少ない処置です。
基本的には日帰りで受けることができ、終わった後も腕をしばらく安静にするだけで済みます。
局所麻酔で行いますので、処置中は基本的に目が覚めている状態ですが、いつの間にかウトウトしているうちに終わる方もいます。
5.何度も必要になることもあります
シャントは使い続けていくと、また同じように血管が細くなってくることがあります。
そのたびにPTAを行うことで、シャントを長持ちさせ、透析を安全に続けることができます。
6.「いつもと違うな」と思ったら、すぐ相談を
シャントPTAが必要かどうか患者さん自身が判断するのは、難しいものです。
しかしわかりやすい兆候として、「シャントの音が弱くなった」「透析中のアラームが頻回になる」「シャント側の腕がむくむ」などがあります。
早めの対処で大きなトラブルを防ぐことができますので、日々のチェックが大切です。
当院でもエコー検査で患者さんのシャントの状態を確認し、必要な場合にはシャントPTAを行っています。