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シャントもいろいろ ~どんな方法がある? どれがよいの?~

[2025.05.19]

人工透析まめ知識、今回は人工透析に欠かせないシャント(バスキュラーアクセス)の種類についての話題です。

 

 

透析治療を受けるには、血液を体の外に取り出してきれいにし、また体に戻す「出入り口」が必要です。

 

この出入り口のことを一般的に「シャント」、最近では「バスキュラーアクセス」と呼びますが、実はいくつかの方法があるのをご存じでしょうか?

 

ここでは、それぞれの特徴や選び方について腎臓・透析専門医がわかりやすくご紹介します。

 

1.そもそも「シャント」って何?

人工透析では、1回の治療で1分間に200~250mlもの血液を体の外に出してきれいに(ろ過)する必要があります。

 

ところが、ふつうの採血で使う血管(静脈)は血流がゆっくりで細いため、それでは間に合いません。

 

そこで使うのが「シャント」です。

 

シャントとは、動脈と静脈をつなぎ合わせることで、静脈に強い血流を流れるようにし、透析に適した血管を人工的につくる方法です。

 

主に腕に作られることが多く、透析を安全に、効率よく行うための大切な準備です。

 

2.よく使われる3つのシャントの方法

「シャント」と一言で言っても、患者さんの状態や血管の様子によって、方法がいくつかあります。

 

ここでは代表的な3つをご紹介します。

自己血管シャント(内シャント)

最も一般的な方法です。

 

患者さん自身の動脈と静脈を直接つなぎ合わせる手術で、主に前腕(手首より少し上)に作られます。

 

血管の太さが細すぎず、動脈の弾力がしっかりある(動脈硬化が強くない)場合に適しています。

 

✅ メリット:長持ちしやすい/感染リスクが低い


❌ デメリット:血管がとても細い人や、糖尿病などで動脈の血流が悪い人、心臓機能が悪い人には作れないことも

 

人工血管シャント

人工の柔らかいチューブ(人工血管)を使って、動脈と静脈をつなぐ方法です。

 

自己血管でのシャントが難しい場合に選ばれます。

 

✅ メリット:どんな血管でも対応しやすい/作る場所の自由度が高い


❌ デメリット:感染や血栓(閉塞)のリスクが高く、シャントの寿命が短くなりがち

 

カテーテル(長期留置型カテーテル)

首の大きな静脈に管(カテーテル)を差し込み、血液を出し入れする方法です。

 

緊急透析や一時的な対応として使われることが多いですが、場合によっては長期間使うこともあります。

 

✅ メリット:皮膚を切開するような手術が不要/カテーテルを入れた当日から透析が始められる 

      透析するときに針を刺す痛みはない


❌ デメリット:感染リスクが高い/詰まるトラブルも多め/入浴後の清潔処置が必要

3.どんなふうに選ぶの? 〜シャントの選び方は“オーダーメイド”〜

どの方法が最適かは人それぞれです。

 

一番大切なのは、「その人にとって最も合った方法」を選ぶこと。

 

そのため、私たち医療者は、次のようなポイントを総合的に見ながら判断しています。

血管の状態(太さ・硬さ・深さなど)

まず大事なのは、腕の血管の太さや流れ方、位置、動脈硬化の状態などです。

 

これらはエコー(超音波)検査で詳しく調べます。


たとえば、「血管が細くて深いところにある人」は自己血管シャントが難しい場合があります。

 

そのような場合は、人工血管を使ったり、もう少し肘近くの太い血管がある場所に作ったりすることを考えます。

持病の有無(糖尿病・心臓病など)

糖尿病がある方は血管がもろくなっていたり、心臓に負担をかけたくない方もいらっしゃいます。

 

特にシャントは自己血管シャント・人工血管シャントは、心臓への負担が増えるため、心臓が弱い方には難しい場合もあります。

 


また、透析を始める緊急度が高い場合には、自己血管シャントや人工血管シャントはすぐに使えないため、カテーテルを選択します。

日常生活や利き腕・お仕事の影響

シャントは、利き腕ではない方の腕に作るのが基本です。

 

しかし、血管が細くてシャントが作れない場合には、やむを得ず利き手に作ることも考慮します。

 

その他、仕事や趣味で手をよく使う方は、生活スタイルも考慮します。

 

年齢・今後の透析スケジュール

高齢の方や今後移植を考えている方、または数年先に透析が必要になりそうな方など、それぞれの背景によってもベストな方法は変わります。

例:若年者ですぐに腎移植の予定あり → 将来を見据えて血管を温存し、長期留置カテーテルを利用

例:90歳以上で他に病気も多い方 → 体への負担が少ないカテーテルを長期的に使うことも視野に

緊急性(すぐ透析が必要かどうか)

血液中の老廃物がたまり、緊急透析が必要な場合には、まず首のカテーテルから治療を始め、落ち着いてから本格的なシャント作成を行うことがあります。

4.手術はどうやって行うの?

自己血管シャントや人工血管の手術は、局所麻酔で日帰りまたは1泊2日ほどで行うことが多いです。

 

手術そのものは1時間前後で終わり、術後しばらくは腫れやむくみが出ることがありますが、数日~数週間で落ち着いてきます。

 

ただし、実際に透析で使えるようになるまでには、少なくとも術後2週間程度あける必要があります。

 

シャントを作ったあとは、定期的に血流のチェックをして、「つまらないか」「流れが悪くなっていないか」を見守っていくことが大切です。

5.まとめ:自分に合った方法を一緒に考えましょう

シャントは、透析を続けていくうえでとても重要な「命の出入り口」です。

 

その方法は一人ひとり違っていて、血管の状態や生活環境によって最適な方法が変わります。

 

「自分はどの方法が合っているのかな?」と迷う方は、遠慮せずに相談しましょう。

 

将来の安心のために、早めに準備を始めることが、スムーズな透析治療への第一歩です。

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