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第34回:10秒間片足立ちができますか? ~片足立ちで見える私たちのミライ~

[2022.10.17]

突然ですが、みなさん(特に中高年の方)は10秒間の片足立ちができますか?

 

そう聞かれると、意外とあまり自信が持てませんよね。

 

実は「片足立ちができるかどうか」は、運動能力のよい指標になるそうです。

 

そして運動能力の低下による”転倒”が人の余命とも大きく関連しているのです。

 

今回は「10秒間片足立ちができるかどうか」と私たちの余命についての関連性をご紹介したいと思います。

”転倒”は死因の第2位!?

本コラムを読んでくださっている方には、加齢と共に自分の運動能力の低下を感じている人も少なくないと思います。

 

また、必要性を感じながらも面倒でなかなか運動が始められたない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

そういう方は、ぜひ今からでも運動を始めましょう。

 

というのも・・・

 

2021年にWHOから発表された声明によると、”転倒”が「意図しない傷害による死亡」の原因の第2位だからです。

※ちなみに、第1位は、交通事故です

 

そしてなんと、世界では年間に推定68万人以上の人が”転倒”で亡くなっているのだそうです。

 

最近は、骨格筋量が減少する”サルコペニア”、そして、サルコペニアによって虚弱体質となる”フレイル”という用語も広く知られるようになり、運動能力や筋力の維持が注目されるようもなっています。

 

また男性では、運動能力が心血管疾患の死亡率の協力な予測因子であることが示されており、重要性が科学的にも証明されてきています。

 

ただ、運動能力といっても、”有酸素運動能力”、”筋力”、”柔軟性”、”バランス力”など数多くありますが、運動能力全般を、”片足立ち”能力で評価できるともいわれているようです。

 

そして今回、(著名な医学誌のスポーツ医学専門誌において)その”片足立ち”と余命との関連性について調査した研究が発表されてたので、ご紹介します。

片足立ちの方法とは?

本研究では、片足で10秒間立つ能力が中高年者の死亡率と関連しているかどうかを調べました。

 

参加者は、1,700人以上の51歳~75歳の中高年層で、平均年齢は61.7歳、68%が男性でした。

 

Br J Sports Med 2022;0:1–7より引用

ちなみに、片足立ちテストには、以下の決めごとがありました(写真を参照ください)。

 

・片足で平らな台の上に、裸足の状態で立つ(左右どちらでもOK)

・使わない足の甲を、反対側のふくらぎにつける

・両肘は伸ばしたままにし、腕は自然に体の近くに置く

・2m先のポイントに視線を固定する

・参加者が正しい姿勢になったら、10秒間のカウントが開始され、最大3回まで挑戦可能

 

さて、この片足立ち10秒間が「できた人」と「できなかった人」とでは、どんな違いがあったのでしょうか?

結果

まず、片足立ちが「できた人」と、「できなかった人」の割合を年齢層別にみたグラフです(グラフ1)。

 

グラフ1:Br J Sports Med 2022;0:1–7より引用、一部改編

当たり前のことかもしれませんが、加齢とともに、「できた人」の割合が減り、「できなかった人」の割合が増えていくことがわかります。

 

そして、70代前半あたりでその割合が逆転します。

 

つまり、70歳を超えても10秒間の片足立ちが「できた人」は、「同年代よりも運動能力が高い」といえます。

 

次に、本研究主目的にといえる生存確率の推移を見たグラフです(グラフ2)。

グラフ2:Br J Sports Med 2022;0:1–7より引用、一部改編

 

グラフを見みると、「できた人」と比べて「できなかった人」は、明らかに生存確率が低いことがわかります。

 

10年後あたり(3,650日目)で比べると、「できた人」は95%以上が生存している可能性があるのに対して、「できなかった人」ですと、70%程度だということになります。

 

しかし、ここで疑問に思うことがありませんか?

 

疑問1: 『片足立ち「できなかった人」は高齢者に多いのだから、高齢者の生存率が低いのは当たり前じゃない?』

 

疑問2: 『片足立ち「できなかった人」って、太ってるかもしれないし、太っていれば持病があるかもしれないし、持病がある人の生存率が低いのも当たり前じゃない?』

 

そこで、今回の研究では、そのあたりも考慮(統計学的に調整)して調査しています(表)。

 

表:Br J Sports Med 2022;0:1–7より作成

疑問1の回答:

 

”年齢”という要因の影響を除去(調整)した場合、「できなかった人」死亡のリスクは、「できた人」の2.18倍だったそうです。

 

つまり、同じ年齢の片足立ち「できた人」と「できなかった人」の二人がいたとしたら、

 

「できなかった人」は、「できた人」と比べて、2.18倍の死亡リスクがあることになります。

 

疑問2の回答:

”年齢”の他に、”性別”・”BMI”・”高血圧”・”心血管疾患”・”糖尿病”などの要因の影響を除去(調整)した場合、「できなかった人」死亡のリスクは、「できた人」の1.84倍だったそうです。

 

つまり、年齢や性別、体重、持病など全く同じ背景をもつ二人がいたとしたら、

 

「できなかった人」は、「できた人」と比べて、1.84倍の死亡リスクがあることになります。

 

以上から、『色々要因を抜きにしても、片足立ち「できなかった人」は、「できた人」よりも、死亡リスクが高い』ということがいえそうです。

まとめ

本コラムを読まれたみなさん、さっそく10秒間の片足立ちをやってみたくなりませんか?

 

もし片足立ちが10秒間できなかったとしても、決して落ち込むことはありません。

 

この論文にも書いてありましたが、「日々の運動によって(バランス感覚を含む)運動能力を改善・維持することが、寿命を延ばすことにもつながる」可能性があります。

 

ただ注意しなければならないのは、片足立ちはあくまでも、「その人の運動能力全般とそれに関連した健康の具合全般を測る指標になる」ということです。

 

片足立ちトレーニングばかりがんばって、10秒間以上片足立ちのスペシャリストになったとしても、寿命が延びるわけではないことには注意が必要です。

 

これまで運動をサボっていたみなさんも、ぜひ運動習慣を始めてみませんか?

 

 

 

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