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第12回:12歳未満の子供にはワクチン接種以外の方法がないのか? ~学校生活再開に向けた海外の挑戦(上)~

[2021.09.27]

緊急事態宣言の解除が近くなり、徐々に通常生活に戻りつつあります。

 

コロナ禍になって以来、学校でも休校や分散登校などが続き、思うように学校生活が進まない日々が続いています。

 

「オンライン授業をやっていればOK」という風潮も一部ではあるようですが、果たして学校という場で学ぶのと同等の教育効果が得られるのか、かなり疑問に思うところです。

 

また、緊急事態宣言が解除されて通常登校が再開しても、いつ休校になるかわからない”恐怖感”は拭えません。

 

社会では経済活動の再開に向けての議論は進んでいますが、学校(特にワクチン接種ができない小学生以下)の今後の体制がこのままで本当によいのかは、あまり議題に上がりません。

 

さらに、12歳未満のワクチン接種については、①まだ安全性が確立されていないこと②子供は感染したとしても重症化しにくいことから、ワクチン接種は許可されていない※1現状は、皆さんもご存じかと思います。※1:個人的に、これは妥当な判断だと思います)

 

一方で、9月20日にファイザー社が「5-11歳の子供にワクチン接種した場合の効果と安全性」についてのデータを発表したという報道がありました。

 

ファイザー社からの発表によると、以下の内容だったとのことです。

 

・5-11歳の2,268人の子供を対象に行った

 

・そのうち2/3の子供は、ファイザー製ワクチンを3週間間隔を空けて2回目を接種し、残りの1/3の子供は偽薬(プラセボ)を接種した

 

・5-11歳の子供は、常用量の1/3量投与でも16-25歳と同等の抗体量が確認された

 

6か月-5歳未満の子供については、常用量の1/10量投与での治験を実施中である

 

(この内容が全てではないかもしれませんが)抗体量だけで子供の感染予防効果、重症化予防効果を判定するのは困難であり、また安全性に関しても短期的なアレルギー反応、心筋炎などについての評価だけだったようです。

 

このレポートだけで12歳未満のワクチン接種が許可されるとはなかなか思えませんが、米国では10月にも5-11歳にファイザー製ワクチン承認が見込まれているという話もあります。

 

⇒※9月28日、ファイザー社がFDA(米国食品医薬品局)に正式のデータを提出したようです。

 

ちなみにニューヨークタイムズ紙によると、米国の5-11歳の子供を持つ親御さんのうち、26%が「すぐにでも接種したい」、40%が「様子を見る」、25%が「接種させる気はない」という調査結果があるようです。

 

先進各国では、子供の学校での感染や、それによる休校が、教育の遅延や停滞につながり、更には親(特に母親)の仕事等の社会活動の障壁にもなることが問題視されています。

 

日本においてもワクチン接種ができない子供たちをどう守るか、教育体制をどう前進させていくかは、国の未来を考える上でも大きな問題でしょう。

 

そのような中で、米国の一部の州や英国で広がっている"test- to - stay"という方法が、「学校生活を進めていく上で効果的ではないか」といわれるようになっています。

 

この方法、現状においての日本では到底無理(あとで方法を知ると理解できます)ですが、欧米では注目されており、その有効性についての論文が著名な医学雑誌にも掲載されました。

 

そこで、この論文から見えてくるコロナウイルス検査の有効な使い方を、2回のコラムに分けて見ていきたいと思います。

 

まず今回のコラムでは、この"test- to - stay"という方法がどのようなものなのかを、ご紹介します。

test-to-stayとは?

米国では、CDCガイドラインの通り、学校でコロナウイルス陽性者が発生した場合、濃厚接触者と判断されると、14日間の自宅待機が求められています

 

日本のように感染者が出た際に、学級閉鎖や学年閉鎖、休校となるわけではなく、感染者とその生徒の濃厚接触者となった生徒や教師のみが14日間の自宅待機となります。

 

つまり、一部の子供が自宅待機となっても、授業カリキュラムは普通に進んで行ってしまうシステムです。

 

そのため、米国の親御さんは、「いつ自分の子供が突然自宅待機になるかを、毎日クジを引くような感覚で戦々恐々としている」ということです(ニューヨーク・タイムズ紙より)

 

このようなシステムをどうにかするための方法として編み出されたのが、test-to-stayです。

 

名前だけでは今一つピンと来ませんが、それほど特別な方法ではありません。

 

方法:濃厚接触者として判断された生徒・職員は、症状がなく、かつ7日間連日で登校前のウイルス抗原迅速検査で陰性である限り、学校に通い続けることができる(迅速抗原検査は登校直前に構内もしくは、別施設で行う)

米国の高校内での迅速抗原検査の様子(ニューヨークタイムズ紙より)

というものです。

 

この方法、実は日本においても目新しいものではありません。

 

医療従事者で濃厚接触者となった場合、欠勤すると人手不足になることから、この方法と類似する方法を行うよう厚生労働省から提示されているのです。

 

日本との違いは、「教育の停滞も同様に問題視して、学校でもこの方法を導入しようとしていること」といえそうです。

 

ちなみに今回ご紹介する論文は、「この方法が、(これまでの自宅待機と比べて)感染拡大を起こさないか?」ということを調べたものです。

 

この論文の内容と結果は、コロナウイルス検査についてのやり方・考え方を大きく変える可能性を秘めています。詳しくは次回のコラムでお伝えしたいと思います。

 

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