第55回:ポテト好きは要注意? フライドポテトと糖尿病の意外な関係
ジャガイモは、日本でも人気の食材ですね。
特にフライドポテトは、ファーストフード店などの外食でよく食べるという方も多いのではないでしょうか。
でもその食べ方、もしかすると将来の「糖尿病リスク」を高めてしまうかもしれません。
今回ご紹介するのは、アメリカの大規模な研究で明らかになった、「ジャガイモの種類と調理法による、2型糖尿病のリスクの違い」についての最新データです。
ジャガイモは悪?
ジャガイモは、ビタミンCやカリウム、食物繊維などを含む一方、デンプンが多く、血糖値を上げやすい食材でもあります。
野菜として扱われることが多いですが、実は“精製炭水化物”に近い性質も持っています。
過去の研究では、「ジャガイモを多く食べると糖尿病のリスクが上がるのでは?」という指摘がありましたが、その結果は一貫していませんでした。
特に、調理法(フライドポテト vs 茹でたジャガイモ)によって、結果が変わる可能性があると考えられてきました。
そこで今回の研究では、アメリカで40年近く続いている3つの大規模な健康調査(約20万人分のデータ)と、
世界の他の研究を統合したメタ解析※を通じて、ジャガイモの摂取量・種類・代替食品との関係を詳細に分析しました。
※メタ解析:過去に実施された複数の研究のデータを統合して、その結果をさらに分析する方法
ジャガイモの調理方法での違い
1.フライドポテトの摂りすぎはリスクを上げる
図1:BMJ 2025;390:e082121より引用
最も注目されたのは「フライドポテト」と2型糖尿病の関係です(図1の下グラフ)。
・ 毎週5回以上食べる人は、週1回未満の人に比べて27%も糖尿病のリスクが高い
・ 週に3回分フライドポテトを増やすごとに、糖尿病リスクは約20%増加(ハザード比1.20)
やはり、フライドポテトは良くありませんね。
2.ゆで・焼き・マッシュポテトは、リスク因子にならない
意外な結果として、ゆで・焼き・マッシュポテトのように油を使わない調理法では、糖尿病リスクとの明確な関連は見られませんでした(図1の上グラフ)。
・ 週5回以上食べていてもリスクはほぼ変わらない(HR 0.99)
ジャガイモの代わりは何がよい?
図2:BMJ 2025;390:e082121より引用
では、ジャガイモの代わりとして、糖尿病のリスクを下げる食材あるのでしょうか?
今回の研究では、1週間の中で、3食分の炭水化物を他の食材に変えてみて、糖尿病リスクを評価しました(図2)。
置きかえ内容 | 糖尿病リスクの変化 |
---|---|
フライドポテト → 全粒穀物 | 19%減少 |
茹で・焼き・マッシュ → 全粒穀物 | 4%減少 |
ジャガイモ全体 → 白米 | 15%増加 |
特に注目すべきは、私たち日本人が主食とする「白米」との置き換えによって、糖尿病リスクがむしろ増加するという点です。
白米は、精製炭水化物に分類され、食後血糖値を急激に上げやすい食品なのです。
今回の研究でも、ジャガイモを白米に置き換えた場合、糖尿病の発症リスクが上がること、またフライドポテトとほぼ同じくらい糖尿病リスク因子になることがわかっています。
「フライドポテトは悪いから白米に変えればいい」というよりも、むしろ血糖値を安定させる全粒穀物(玄米、全粒パン、オートミールなど)に置き換えることが効果が高いようです。
こんな結果だと昨今ますます米離れが進みそうですが、、、
まとめ
・ フライドポテトの食べすぎは2型糖尿病のリスクを高める
・ ゆでたり、焼いたりしたジャガイモは糖尿病リスクに影響を与えにくい
・ 食生活は「避ける食材」だけでなく「代わりに何を選ぶか」も重要
・ 白米は“主食”ではあっても、糖尿病予防の観点からは注意が必要
健康的な食事のためには、ジャガイモやその他の炭水化物の食べ方にも一工夫が必要ですね。
※このコラムは、2025年に発表されたBMJ掲載論文「Total and specific potato intake and risk of type 2 diabetes: results from three US cohort studies and a substitution meta-analysis of prospective cohorts」の内容をもとに、一般の方向けに私見も含めて解説したものです。