一般の方への「腎機能検査のよみ方・考え方」
腎臓は私たちの体でとても大事な役割を果たしていますが、腎臓が元気かどうかを自分では感じにくいものです。
だからこそ、腎機能をチェックするための検査を定期的に受けることがとても大切です。
でも、健診や病院受診時の検査結果を見たところで、「なんのことやらよくわからん!」というのが本音ではありませんか?
今回は、腎機能検査の読み方と、慢性腎臓病とのつながりについてわかりやすく解説します。
1. 腎機能検査にはどんなものがあるの?
腎臓の健康をチェックするための代表的な検査として、血液検査と尿検査があります。
実はこれらの検査結果から、腎臓がしっかり働いているかどうかを大体知ることができてしまうのです。
・血液検査:
「クレアチニン」や「eGFR(イー・ジー・エフ・アール:推算糸球体濾過率)」が項目として測定されます。
「クレアチニン」
腎臓が体の老廃物をどれだけ処理できているかを示し、うまく処理できていない(腎機能が落ちている)とクレアチニンが体内に溜まりやすく(数値が高く)なります。
「eGFR」
腎臓がどれくらい効率よく血液をきれいに(ろ過)しているかを示すもので、「クレアチニン」の値と、年齢・性別を入力する計算式から算出されます。
つまり、上に書いた「クレアチニン」の値と連動しており、「クレアチニン」が”高く”なると、「eGFR」は”低く”、「クレアチニン」が”低い”と「eGFR」は”高く”なります。
・尿検査:
腎臓の状態を見るために必要な尿検査、中でも大切な項目は、「尿たんぱく」と「尿潜血」です。
「たんぱく尿」
「たんぱく尿」が出ていると腎臓のフィルターが傷ついている可能性があります。
「尿潜血」
尿潜血は微細な血液が尿に混ざっていることを示します。
腎臓や尿路に炎症がある場合の他、尿路の感染症、尿管や膀胱の異常、あるいは前立腺のトラブルなどで見られることがあります。
これらの結果をもとに、腎臓の状態を確認することができます。
2. eGFR(推算糸球体濾過率)のよみ方と考え方
eGFRは、「腎臓がどれくらい効率よく血液をきれいに(ろ過)しているか」を表す指標で、いわゆる「腎臓のはたらき」を反映しています。
eGFRから自分の腎臓のはたらき具合を把握し、必要な対策をとることが大切です。
各eGFRの値から、大まかな状態を確認してみましょう。
<eGFRが90以上>
正常な腎機能を示しています。腎臓が健康に働いており、老廃物を効率よく処理しています。
<eGFRが60~89>
若干の腎機能低下が見られますが、年齢的な変化のことも多く、大きな心配はない段階です。
ただ、高血圧や糖尿病などをお持ちの方は注意が必要なので、定期的にチェックしましょう。
<eGFRが30~59>
中等度の腎機能低下が見られます。
自覚症状はありませんが、ここで早めに対策を取らないと、腎臓の状態がさらに悪化するリスクがあります。
<eGFRが15~29>
重度の腎機能低下があり、近い将来透析が必要になる可能性が高い状態です。
この段階あたりからは、専門的な治療が必要です。
<eGFRが15未満>
末期の腎機能障害があり、いつ透析が必要になってもおかしくない状態です。
食事やおくすりなどをしっかりと管理していく必要があります。
なんとなく分かりましたか?
ただ、この中で一つ注意点があります。
例えeFGRが90以上など、問題ない数値であっても、次に書く「尿たんぱく」がある方、要注意(!!)です!
3. 尿たんぱくと尿潜血のよみ方と考え方
先ほど書いたeGFRが「腎臓のはたらき具合」を反映したものですが、尿検査で見れるものは少しちがいます。
尿検査では、腎臓において「どこか傷ついていないか」「炎症などがないか」をチェックすることができます。
中でも、「たんぱく尿」と「尿潜血」が特に大切な指標になります。
・たんぱく尿:
健康な腎臓では、体に大切な栄養素であるたんぱく質は尿に漏れることはありません。
しかし、腎臓が傷ついていると、そのフィルターが壊れて、たんぱく質が尿に漏れ出してしまうのです。
つまり、たんぱく尿が出ている場合は、腎臓に「何らかのダメージ」があるサインです。
この「何らかのダメージ」、放っておくと徐々にそのダメージが広がってしまう危険性があり、いつのまにか腎臓のはたらき(eGFR)が落ちてしまうことがあります。
特にたんぱく尿が多いほど、腎臓のダメージも広がりやすくなってしまいます。
そのため先ほど書いたように、例えeGFRが問題なくても「たんぱく尿」がある場合には、必ず受診しましょう!
※たんぱく尿について詳しくは ⇒こちら
一般的な尿検査(定性検査)では、たんぱく尿がない場合は(-)、ある場合にはその程度によって(±)~(3+)と書かれています。
もちろん「プラスの数が多ければ多いほど、たんぱく尿も多い」ということになりますが、
具体的な概算量(尿たんぱく/クレアチニン比)まで測定されていることはマレです。
この概算量(尿たんぱく/クレアチニン比)は、多くは専門医で測定されることになります。
概算量(尿たんぱく/クレアチニン比)から、大まかな状態を確認してみましょう。
<尿たんぱく/クレアチニン比が0.15未満>
正常レベルです。
<尿たんぱく/クレアチニン比が0.15~0.49>
正常レベルからは逸脱しており、注意が必要です。
<尿たんぱく/クレアチニン比が0.5-0.99>
今後、腎臓へのダメージが広がる可能性が高く、何らかの治療が必要です。
<尿たんぱく/クレアチニン比が1.0以上>
さらに詳しい検査(腎生検)を行って、積極的に治療する必要があります。
・尿潜血:
目に見えない程度の微小な血液が尿に混じっていることを示します。
※尿潜血について詳しくは ⇒こちら
先ほども書いた通り、腎臓や尿路に炎症がある場合の他、尿路の感染症、尿管や膀胱の異常、あるいは前立腺のトラブルなどで見られることがあります。
ただ、「尿潜血」だけ認めるケースでは、腎臓のはたらきに影響がおよばないことも多くあります。
そのため、慢性腎臓病(CKD)においては、「尿潜血」は重要項目にはなっていません。
4. 慢性腎臓病との関係
慢性腎臓病(CKD)は、時間をかけて少しずつ腎臓のはたらきが落ちてしまった病気です。
一般的な定義は、
「腎臓の機能低下(GFR60未満)または、たんぱく尿が3ヶ月以上続く状態」
とされます。
つまり、「eGFR」と「たんぱく尿」が慢性腎臓病においては、大切な検査です。
どちらも、またはいずれかに問題がある場合には、慢性腎臓病にかかっている可能性があります。
5. まとめ
もし健診結果などにこれらの項目があったら、ぜひご自身でチェックしてみましょう。
もし、腎機能検査で異常が見つかった場合は、慢性腎臓病にかかっている可能性があります。
慢性腎臓病は、早期発見と継続的なケアが大切ですので、早めの受診をしましょう!