シャントってなに?シャント手術と管理のポイント
人工透析まめ知識、今回は人工透析を受けるにあたって欠かせない「シャント」についての話題です。
透析治療を始めるにあたって、まず必要になるのが血液の出入口となる「シャント」です。
でも、「シャントってなに?」「どんな手術なの?」と、不安に感じる方も多いと思います。
今回は、腎臓・透析専門医がシャントについてわかりやすくお話しします。
1.”シャント”ってなに?
”シャント”とは、血液を体の外に出して透析する(血液をきれいにする)ための“特別な血管”のことです。
通常、採血などをするときに使う皮膚表面の血管は、「静脈」と呼ばれるもので、流れが非常にゆっくりです。
そのため、体中の血液をたくさん外に出したりすることはできません。
一方、「動脈」と呼ばれる血管は心臓から直接流れてくる血管で、とても流れが速く、たくさんの血液を外に取り出すことができます。
しかし、この「動脈」は、皮膚から深いところを走っており、また動脈硬化などでもろくなっていることもあり、採血のように気軽に針を刺すことはできません。
そこで、「静脈」の利点と欠点、「動脈」の利点と欠点とを上手くカバーした方法が「シャント」と呼ばれるものです。
簡単にいうと、「腕の動脈と静脈をつないで、静脈に血液がたくさん流れるようにしたもの」を、「シャント」と呼びます。
2.シャント手術ってどんなことをするの?
シャント手術は、前腕(ひじから手首の間)で行います。
主に利き手ではない方の手を選択することが多いです。
局所麻酔で、1-1.5時間ほどで終わる比較的かんたんな手術です。
皮膚の切開は、3-5cm程度で、実際に動脈と静脈をつなぐ部分のサイズも6-8mm程度と非常に小さいものです。
小さくつないでも、動脈の流れは非常に速いので、静脈に血液がたくさん流れるようになります。
術後2-4週間経って、腕の静脈が「太くて強い静脈」に発達すると、透析で使えるようになります。
3.シャントができたらどうするの?
シャントができたあとは、毎日かんたんなチェックをしていただくのが大切です。
シャントのある部分に手をあてると「ザー、ザー」という連続する振動(スリル)が感じられます。
これは血液がしっかり流れているサイン。
この”スリル”が感じられないときや、「ザッ、ザッ」という途切れるような振動のときは、
何らかの異常が起こっている可能性が高いので、相談しましょう。
4.シャントを長持ちさせるコツ
シャントはまさに「透析の命づな」です。
日々の生活でも長く使えるように注意していくことが大切です。
血圧測定や採血をシャント側の腕で行わないこと
シャントの腕をしめつけないこと(腕枕や重い荷物に注意)
定期的にシャントエコー検査※などで、状態をチェックしてもらうこと
異常を感じたらすぐに病院へ連絡すること
※ 当院では、エコーを使った検査、穿刺(透析時に針を刺すこと)、治療を日々行っています
5.まとめ
シャントは、透析生活のスタートラインです。
手術と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、しっかり管理すれば長く使い続けられる大切な「血管のパートナー」です。
これから透析を始める方や、すでに透析中の方にも、シャントへの理解を深めて、安心して治療を受けていただければと思います。
気になることがあれば、いつでもスタッフや医師にご相談ください。