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透析と食事:控えるべきものと摂ってほしい栄養素

[2024.12.03]

透析を受けている方にとって、「食事」はとても大切なテーマですね。

 

腎臓がうまく働かなくなると、体にたまりやすくなる成分や、逆に不足しがちな栄養素が出てきます。

 

正しい知識を持って食事を工夫することで、透析生活の質をグッと上げることができます。

 

今回は、「控えたほうがよいもの」と「しっかり摂ってほしいもの」について、腎臓・透析専門医の視点からお話しします。

1. 控えめにしたい「リン」:骨と血管を守るために

リンは、もともと私たちの骨や歯を丈夫に保つのに必要な栄養素です。

 

しかし、腎臓の機能が落ちると、余分なリンを体の外に出すことができなくなり、血液中のリン濃度が高くなってしまいます。

 

これが長く続くと、さまざまな悪影響が出てきます。

 

まず、血液中のリンが高いと、血管の中でカルシウムと結びつきやすくなり、血管が硬くなる(動脈硬化)原因になります。

 

また、皮膚のかゆみや、関節の痛み、さらには骨がもろくなるなどの症状も見られます。

 

重度になると、皮膚や目などに石灰化が起こることもあるため、注意が必要です。

 

※ リンについて詳しくは ⇒こちらをクリック

 

リンを多く含む食品例:

  • 加工食品(ハム、ベーコン、ソーセージ、インスタントラーメンなど):添加物はリンの宝庫です

  • 乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)

  • ナッツ類、チョコレート

  • 炭酸飲料(リン酸が添加されているもの)

  •  

リンを減らすための工夫:

  • 食品表示をよく確認し、「リン酸塩」や「カゼインNa」などの添加物が含まれていないものを選ぶ

  • 加工食品を控えめにし、なるべく「手作り」に近いものを選ぶ

  • 牛乳や乳製品は「1日1回、少量」にとどめる

  • リン吸着薬(医師から処方されている場合)は、必ず食事と一緒に飲む

  •  
リンが高い方へのヒント💡

特に、洋風の朝食(トーストにバター、卵料理、ハムやベーコン、牛乳やヨーグルト)は、意外とリンが多めです。

 

「リンが高いですね」とよくいわれている方は、注意してみましょう。

2. 気をつけたい「カリウム」:心臓を守るために

カリウムは、筋肉の動きや心臓のリズムを整えるのに必要な栄養素です。

 

しかし、腎機能が低下している状態では、体の外に出しきれなくなり、血中カリウム濃度が高くなりすぎることがあります。

 

この状態(高カリウム血症)が続くと、手足のしびれや筋力の低下が出てくるほか、心臓の不整脈、そして最悪の場合は心停止など、命にかかわる危険もあるため、特に注意が必要です。

 

カリウムが多く含まれる食品例:

  • 果物(バナナ、メロン、キウイ、柿、アボカド)

  • 野菜(ほうれん草、かぼちゃ、にんじん、じゃがいも、さつまいも)

  • 豆類(枝豆、納豆、小豆、あんこ)

  • 果汁100%ジュース、トマトジュース

  •  

カリウムを減らすための調理法・工夫:

  • 野菜は切ってから水にさらし、ゆでこぼして調理(茹でることでカリウムが減少)

  • 果物は種類と量を管理し、1日1回・1つ程度に制限

  • 生のままではなく加熱調理する(スープは飲まずに具だけ食べる)

  • 加工豆腐などは湯通ししてから使う

  •  
カリウムが高い方へのヒント💡

ほとんど生野菜や果物を食べないのに、「カリウムが高いですね」とよく注意されてしまう方、イモ類(ポテトチップスなど菓子類も含む)や鶏肉は多く摂っていませんか?

 

これらは、生で食べることはほとんどありませんが、意外とカリウムが多く含まれてますので、食べ過ぎに注意しましょう。 

 

また、便秘も腸管内でカリウムが吸収されてしまい、カリウムが高くなる原因になります。

 

透析患者さんはどうしても便秘になりやすいので、下剤などで便通をよくしておくことが大切です。

 

3. 塩分(ナトリウム)のとりすぎに注意:むくみ・血圧・水分管理のために

塩分をとりすぎると、体に水分がたまりやすくなります。

 

透析患者さんにとって、これは大きな問題です。

 

体に水がたまれば、体重が増えやすくなり、透析のときにたくさん水分を引かなければならず、血圧が下がったり、疲れやすくなったりします。

 

また、塩分は血圧を上げるため、心臓や血管への負担も大きくなります。

 

塩分が多い食品例:

  • インスタント食品(ラーメン、カップ麺など)

  • 練り物(かまぼこ、ちくわ、はんぺん)

  • 漬物、梅干し、佃煮

  • 醤油、味噌、ドレッシングなどの調味料

  •  

塩分を控えるコツ:

  • 減塩タイプの調味料を使う(減塩しょうゆ、減塩味噌など)

  • 味つけは「だし」や「酢」「レモン」「香味野菜(しょうが、にんにく)」を活用

  • 食べる直前にかけることで、少量でも満足感を得られる

  • 外食では「スープを残す」「ソースは別皿にしてつけながら食べる」

  •  
塩分量を減らすためのヒント💡

濃い薄いの味感覚は、基本的に「慣れが9割」といっていいほど習慣の問題です。

 

薄味だと最初は味気なく感じてしまいますが、根気よく続けていくと、ある時期からそれが普通に感じてきます。

 

ラーメンや漬物などは「しょっぱすぎて食べれない」というところまで来てしまえば、こっちのもんです。

4. しっかり摂ってほしい「たんぱく質」:体力と筋力を守るカギ

透析では、体内の老廃物とともに、どうしてもたんぱく質が一緒に血液中から取り除かれてしまいます。

 

そのため、透析を受けていない腎不全患者さんとは異なり、透析患者さんは「しっかりたんぱく質を摂る」ことが大切です。

 

ただし、「高たんぱく食」にすると同時に、「リンやカリウム」にも注意が必要になるため、バランスのとれた食事計画が欠かせません。

おすすめのたんぱく質源:

  • 鶏ささみ、豚ヒレ肉、赤身の牛肉

  • 白身魚(タラ、カレイ、タイなど)

  • 卵(1日1個まで)

  • 大豆製品(豆腐、納豆など)※量に注意

たんぱく質摂取の工夫:

  • 1日3食に分けて、少しずつしっかり摂る

  • 無理に量を増やすより、質の良いたんぱく質を選ぶ

  • 栄養補助食品(医師・栄養士に相談)を上手に活用

  •  
タンパク質をとるためのヒント💡

透析中や透析直後は、体が栄養素を効率よく吸収する状態になっています。

 

ですから、そのタイミングで食事したり、栄養補助食品を摂取できるといいですね。

 

透析施設によっては食事の制限などがあるかと思いますので、スタッフに相談してみましょう。

5. 栄養バランスと楽しさも忘れずに

制限ばかりの食事では、楽しみがなくなり、精神的にも負担になります。

 

大切なのは、安心して食べられるものを知り、工夫して楽しみながら続けることです。

 

楽しみながら続ける工夫:

  • 彩りや盛り付けを工夫する(食欲がわく)

  • 家族と一緒に制限食を考える(孤立感の解消)

  • 栄養士さんに「自分に合ったメニュー」を相談

  • 記念日などには特別なメニューを「計画的に」楽しむ

  •  

6. おわりに

透析中の食事は「ガマンばかり」ではありません。

 

自分の体に合った食べ方を知り、工夫することで、透析生活をより快適に、前向きに送ることができます。

 

食事は「治療の一部」であり、「人生の楽しみ」でもあります。

 

私たちスタッフや家族と協力しながら、自分に合った食事のスタイルを見つけていきましょう。

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