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第43回:「タウリン◯◯◯ミリグラム配合」は、アンチエイジング!?

[2023.07.13]

「タウリン◯◯ミリグラム配合!」というフレーズを聞いたことありませんか?

 

栄養ドリンクの宣伝文句でよく耳にしてきましたが、

 

なんとなく私も「タウリンがたくさん入っていると効果がありそう」と思っていたものの、あまりタウリンについて詳しいことは知りませんでした。

 

今回、そのタウリンの効果についての研究結果がサイエンス誌より発表されましたので、ご紹介したいと思います。

 

 

そもそもタウリンとは?

そもそもタウリンって、よく聞く言葉ですが、実際どのようなものなのでしょう?

 

厚生労働省の健康情報サイトによると、タウリンとは・・

 

「たんぱく質が分解される過程でできるアミノ酸に似た物質。魚介類や軟体動物に多く含まれ、消化管内でコレステロールの吸収を抑える働きなどを持つ。」

 

と書かれています。

 

そして、農林水産省のホームページによると、タウリンの働きには以下のものがあるそうです。

 

① 血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす


② 血圧を正しく保ち、高い血圧を下げる

 

③ 肝臓の解毒能力を強化。アルコール障害にも効果的


④ インスリン分泌を促進し糖尿病の予防・治療に有効


⑤ 視力の衰えを防ぎ、新生児の脳や網膜の発育を助ける

 

実際、処方薬としても「タウリン散98%®」という薬剤があり、

「高ビリルビン血症(閉塞性黄疸を除く)における肝機能の改善」

 

「うっ血性心不全」

 

「ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作(MELAS)症候群における脳卒中様発作の抑制」

 

のために処方されることがあります。

 

タウリンのアンチエイジング効果

では、そのタウリンに関する研究についてご紹介していきます。

 

この研究は、(ヒトではなく)マウスと線虫を使った研究でした。

 

図1:Science 2023 Jun 9;380(6649):eabn9257より引用

元々、ヒトもサルもマウスも加齢とともに、血中のタウリン濃度は低下傾向にあることは知られており、それが老化現象の一因の可能性が考えられていたそうです(図1)。

 

今回の研究では、中年マウスに対して体重1kgあたり1,000mgのタウリンを1日1回投与して、その”平均寿命”のほか、”健康寿命の指標”(骨、筋肉、脳、膵臓、脂肪、腸、免疫系などの状態)について

 

タウリンを投与しなかったマウスと比較してみました。

 

 

図2:Science. 2023 Jun 9;380(6649):eabn9257

すると、タウリン投与マウスでは、平均寿命が平均10-12%程度、最大18-25%程度の延長を認めたそうです(図2)。

 

次に、健康寿命の指標はどうだってのでしょう?

 

タウリン投与マウスにおいて、加齢に伴う体重増加が10%程度抑制されたそうです。

 

さらに、タウリン投与マウスは骨の強さが改善したり、握力テストによる筋力増加が見られたそうです。

 

その他、タウリン投与マウスのメスにおいては、うつ病に似た行動や不安行動が減り記憶が強化されるなどなど、

 

 

加齢の変化を抑える働き(健康寿命の維持効果)が色々と認めたとのことです。

 

しかし、これらはあくまでも動物実験(マウス)での結果であり、ヒトではないことに注意が必要です。

 

ヒトではどうなの?

今回の研究は、マウスと線虫を対象に行われ、サルやヒトでは行われていません。

 

特に、ヒトでは安全上の懸念がまだ残っているそうです。

 

今回、マウスに投与されたタウリンの量は、ヒトの体重で換算すると1日50-60gという量を投与されたことになります。

 

この量は、欧州食品安全機関から提言されている「1日タウリン摂取量の安全基準:6g以下」からすると、10倍程度になってしまい、とても現実的ではありません。

 

実際、タウリンを大量に摂取すると、消化器系や腎臓への負担、他の薬剤との有害な相互作用を引き起こす可能性があるとされてるようです。

 

ただ今回の研究の中では、ヒトのタウリン血液濃度とさまざまな数値も観察しています。

 

それによると血液中のタウリン濃度が高い人ほど、BMIが低かったり、糖尿病の人が少なかったり、血糖が低かったりしたそうです

 

※これはいわゆる「鳥と卵の関係」で、どちらが原因でどちらが結果ははっきりしていないことに注意が必要です

 

図3:Science. 2023 Jun 9;380(6649):eabn9257

また、運動とタウリン関連代謝物との関係を見てみると、「運動することで、タウリン関連代謝物の血液中濃度が上昇している」ことが判明したそうです(図3)。

 

つまり、運動による健康上の利点は、タウリンの代謝と関連している可能性が高いと考えられるとのことです。

 

日本人は、タウリン摂取量が多い!?

日本人が世界的にも長寿なのはよく知られていますが、この理由としてタウリン摂取量に注目した研究があります。

 

図4:Advances in Experimental Medicine and Biology book series (AEMB,volume 643)より引用

これによると、日本人の食事からのタウリン摂取量は、(地中海地域以外の)欧米と比べると、3-4倍程度摂取しているようです(図4)。

 

特にこの研究では、在日ブラジル人と沖縄県民との比較を混じえて、「魚介類の食事が多いこと」が理由と説明されています。

 

タウリンが多い食事が、コレステロール値を下げたり、血圧に影響したりすることで、心血管系疾患の予防になりうると言われています。

 

まとめ

今回の研究結果から、

 

・タウリンの減少によって老化が進みやすくなる可能性

 

・タウリンの摂取によって老化防止(アンチエイジング)になる可能性

 

 が見えてきました。

 

しかし、まだヒトにおいてどこまで効果があるかは、未解明です。

 

先程書いた通り、大量摂取による臓器への負担や、その他の薬物との相互作用はまだ不明な点が多いので、大量摂取は控えたほうが良さそうです。

 

むしろ、魚介類の食事を多くすることを心がけるくらいがよいかもしれません。

 

もちろん、「タウリン〇〇◯ミリグラム配合!」と書かれた栄養ドリンクをほどほどに飲むことも悪くありませんが、大量摂取は止めておきましょう。

 

 

 

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