第45回:からだによい人工透析はどちら!? ~血液透析(HD)と血液濾過透析(HDF)~
”人工透析”といっても様々な方法があるのをご存知ですか?
昔から一般的に行われてきた”血液透析(HD)”のほか、”血液ろ過透析(HDF)”、”血液ろ過(HF)”などがあります。
当院では、”高流量”の透析液を使った「オンラインHDF( online HDF)」という方法で行っておりますが、
その”高流量でのHDF (online HDF)”と”高効率HD (high flux HD)”、
どちらがよいかを比較した研究結果が世界的な医学雑誌に発表されましたのでご紹介します。
※ 当院のオンラインHDFについては⇒こちらをクリック
研究の内容とは?
今回の研究では、1360人の人工透析患者さん(半分の人が高流量HDF、もう半分の人が高効率HDを受けています)について調べました。
患者さんの平均年齢は62歳程度で、約3年間にわたって亡くなった患者さんの人数や原因について分析しました。
HDFとHDどちらがよい?
約3年間、この人工透析患者さんたちの経過を追っていったところ、HDFを受けていた患者さんは、HDを受けていた患者さんよりも、死亡リスクが
グラフ:N Engl J Med 2023; 389:700-709より引用
約20%以上(HR 0.77倍)低かったそうです(グラフ・表1の赤枠)。
さらにこのHDFは、
持病に「糖尿病がない患者さん」においては約35%(HR0.65)、
「心臓病がない患者さん」では約40%(HR 0.58)の
表1:N Engl J Med 2023; 389:700-709より引用
死亡リスク低減効果があったとのことです(表1の緑枠と赤枠)。
また、この研究中に新型コロナ感染のパンデミックが起こりました。
そこで、新型コロナ感染を含む感染症による死亡リスクについても分析したところ、HDFを受けていた患者さんの方が、約30%(HR 0.69)低かったとのことです(表2の青枠)。
表2:N Engl J Med 2023; 389:700-709より引用
HDFは万能なのか?
ここまで聞くと、「HDF最高!!」と考えてしまいます。
しかし、持病として「心臓病がある患者さん」や、「糖尿病がある患者さん」においては、HDFとHDとでは、死亡リスクを減らす効果に大きな差はなかったそうです。
また、死亡リスクに関しては、上記のごとくHDFの効果が高かったのですが、再入院リスクで比べると、大きな違いはありませんでした。
さらに今回の研究は、高効率HDや高流量HDFを受けられる患者さん(比較的若くて元気のある透析患者さん)を対象に行っているのにも注意が必要です。
つまり、身体が小さい高齢者の方は研究の対象外になっている可能性があるため、このような患者さんに対する効果は未知数だといえるでしょう。
まとめ
今回の研究をまとめますと、
・ 高流量HDF(オンラインHDF)は、高効率HDよりも死亡リスクを低減する効果がありそうだ
・ 特に「糖尿病のない患者さん」「心臓病のない患者さん」で、その効果は高くなる
・ 死亡リスクは下がったが、再入院リスクはあまり差がなかった
・ 身体が小さい高齢者の方への効果はまだ未知数
HDFの効果は万能とはいえない結果でしたが、今のところ「HDFはHDよりも良くない」というデータはなさそうです。
当院でもオンラインHDFを受けていただき、元気に通っている患者さんたちが数多くいらっしゃいます。
これからもオンラインHDFの効果がもっとわかってくるといいですね。