スタッフブログ第35回:透析患者さんの口の中のはなし
みなさんは、自分の口の中のケアを気にしたことがありますか?
今回は、透析患者さんの口の中のケアについて、お話しします。
透析患者さんは肺炎(とくに誤嚥性(ごえんせい)肺炎※)を起こしやすい
※ 食べ物や飲み物、あるいは唾液などが口から気管に入ってしまうことで起こる肺炎
透析患者さんは、健常人と比べて免疫力が落ちており、様々な感染症にかかりやすい状態です。
さらに、
① 高齢の方が多いこと
② (高齢の透析患者さんはとくに)食べ物を飲み込む力(嚥下機能)が落ちやすいこと
③ 口の中の衛生状態が悪くなりやすいこと
などから肺炎や誤嚥性肺炎を起こしやすいといわれています。
① 高齢の方は肺炎になりやすい
日本において、高齢者の肺炎のうち”誤嚥性肺炎”が7割以上を占めています。
つまり、透析患者さんだけでなく、高齢の方はだれでも「誤嚥性肺炎を起こしやすい」といえます。
② 身体機能や嚥下機能が低下すると誤嚥しやすい
では、なぜ高齢になると、「誤嚥性肺炎を起こしやすい」のでしょうか?
高齢になると飲み込みの機能である「嚥下機能」が低下します。
高齢の透析患者さんは食べ物や水分が気管に入ってもムセにくく、
気づかないうちに飲食物が気管に流れ込んでいることもあるため、注意が必要です。
また、飲食時だけでなく、夜間に寝ている間に唾液が気管に流れ込むことも少なくありません。
このように気管に流れ込んだ飲食物や唾液が、肺で炎症を起こすと、”誤嚥性肺炎”になってしまうのです。
③ 口の中の衛生状態が不良になりやすい
高齢になってくると、口の中の衛生状態を清潔に保つことが難しくなります。
口腔ケアが行き届いていないと、虫歯や歯周病を起こす細菌が唾液とともに気管に入り込み、誤嚥性肺炎を起こしやすくなるのです。
特に透析患者さんは、口の中が乾燥ぎみになりやすい環境です。
では、透析患者さんの口の中は、どのような特徴があるのでしょうか?
透析患者さんの口の中
唾液は口の中の細菌の増加をおさえて、虫歯や歯周病の進行を防ぐ免疫機能の役割も持っています。
透析患者さんは透析での除水や日常的な水分制限、唾液を分泌する唾液腺の萎縮、薬の副作用などによって唾液の分泌が少なくなり、口の中が渇きやすい状態です。
透析患者さんの口の中は、口腔乾燥をはじめ、歯石やプラークの付着、歯のぐらつき、歯肉のやせなど、虫歯や歯周病のリスクも高い状態です。
虫歯や歯周病が多いと口の中の細菌も増えて誤嚥性肺炎のリスクが高まってしまいます。
誤嚥性肺炎を防ぐために
誤嚥性肺炎を防ぐためには、①誤嚥を防ぐための対策、②感染症の予防・重症化を防ぐための対策、そして③口腔ケアが大切です。
では、具体的にどのようなことをすればよいか見ていきましょう。
手洗い・うがい
肺炎の重症化や死亡を予防するには、感染予防対策としての手洗い・うがいはとても大切です。
虫歯予防のために家庭でのケア
透析患者さんが虫歯を予防するためには、以下のようなご家庭でのケアを行いましょう。
① 食べた後には歯を磨いて、口の中をきれいにしておくこと
② 日中のうがいの回数を増やして、口の中の細菌を減らすこと
③ 入れ歯を使用している人は、入れ歯を清潔に保つこと
予防接種
肺炎球菌ワクチンやインフルエンザ、コロナワクチンの予防接種を受けることも重要です。
特に、肺炎球菌ワクチンの接種により肺炎全体の発症を予防し、死亡リスクを軽減することが示されています。
嚥下リハビリテーション
舌の運動や発声練習を行うことで嚥下機能低下の予防につながります。
歯科での定期検診受診
歯科での定期検診を受け、家庭のケアだけでは取りきれない歯垢や歯石を除去しましょう
まとめ
口の中のケアは、虫歯予防だけでなく、肺炎予防になります。
ご家庭でできることも多くありますので、ぜひ実践してみてください。