第42回:やっぱり朝活がいちばん!? ~運動のタイミングと健康の関係~
運動が健康に良いことはもはや言うまでもありませんが、、運動するなら”午前”と”午後”どちらがよいのでしょう??
実は最近、「”運動するタイミング”や”食事のタイミング”などが健康(体重や代謝、心血管系など)に影響を及ぼす可能性がある」と言われるようになって注目されているそうです。
特に、「日中のどのタイミング運動するか」に注目した運動を”クロノアクティビティ(chronoactivity)”というそうです。
実際、いくつかの研究では、運動するタイミングの重要性が示されています。
そこで今回は、心血管系疾患(心筋梗塞や脳出血、脳梗塞など)予防に最適な活動(運動)のタイミングについて調べた研究が発表されましたのでご紹介します。
どのような研究?
今回の研究は、英国のUK -biobankと呼ばれるデータベースから抽出された86,000人あまりの人を対象に2006~2010年にかけての4年間を追跡したそうです。
参加者の平均年齢は61歳(女性が58%)で、平均BMIが26台と少し太めです。
また、すでに持病として心血管系疾患を持った人は除外されています。
Axivity社の3-Axis Logging Accelerometer (AX3)
参加者は、「手首装着型の加速度センサー(写真)」を装着しながら日常生活を送り、その活動量と心血管系疾患発症との関連性を調べました。
そして、これらの参加者が活動量の増える時間帯から、以下の4つのグループに分類しました(グラフ1)。
① 早朝活動タイプ
② 遅朝活動タイプ
③ 夕方活動タイプ
グラフ1:European Journal of Preventive Cardiology (2022) 00, 1–9
では、それぞれのタイプは、心臓疾患(狭心症・心筋梗塞など)・脳出血・脳梗塞の発症危険度にどれくらいの違いがあったのでしょう??
結果
グラフ2を見てていただくと、②遅朝活動タイプの人たちが、心臓疾患・脳出血・脳梗塞いずれも最も危険度が低いのがわかります(グラフ2の赤まる)。
グラフ2:European Journal of Preventive Cardiology (2022) 00, 1–9
一方で③夕方活動タイプは、心臓疾患の危険度は全体平均よりも高い傾向にありました(グラフ2の青まる)。
意外だったのは、①早朝活動タイプです。
”朝活”が健康によさそうなことはなんとなく想像できます。
しかし、①早朝活動タイプよりも、②遅朝活動タイプの方が、より健康的なようです。
つまり、”朝活”といっても、「あまり早い時間帯に活動しても健康効果は、それほど望めない(特に脳出血)」ということになります。
”朝活”というと、早起きして早朝から活動するイメージですが、もしかする「ふつうに起きて、朝食後から活動するので
十分」なのかもしれませんね。
また、もう一点興味深い結果もありました。
それは、男女差です。
この研究では、参加者を男女に分けても解析しています(層別解析)。
その結果、「朝活の効果は女性のみで強く認め、男性では効果がほとんど見られなかった」そうです。
つまり、グラフ2で示されている予防効果は、「全て女性によってもたらされていた」ということです。
まとめ
今回ご紹介した研究結果をまとめてみましょう。
・ 朝の活動量が多いほうが、心血管系疾患(心臓病・脳出血・脳梗塞)の予防につながる可能性がある
・ 「朝の活動」とは、特別早朝である必要はなさそうだ
・ ”朝活”は、女性において効果が高い可能性がある
最初にも書いた通り、”朝活”の効果は以前より言われてきましたが、動物実験だったり、少人数を対象にしたものだったようです。
一方で今回の研究は、8万人以上を対象にした大規模な研究出会ったことに価値があります。
しかし、「午後の運動が血圧によい」だったり、「糖尿病患者では午後の運動が血糖改善に有効だった」という、
反対の結果を示す研究も過去にはあります。
ですから、”クロノアクティビティ”に対する見解はまだ確立していないのが現状のようです。
ただし、確実に言えることは、「どの時間帯であれ、運動しないよりも運動した方が、からだにはよい」
ということでしょう。
みなさんも運動する時間を一日のどこかで作ってみませんか?