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第22回:ワクチンはロング・コビット(コロナ感染後遺症)にも有効か?

[2022.02.01]

オミクロン株感染が猛威を振るっています。

 

当院にも発熱の方が多く来院されておりますが、検査で陽性になる確率は以前よりも格段に高い印象です。

 

オミクロン株感染の症状や重症化リスクは軽度であることが知られるようになり、少し安心できる情報ですが、”感染してもよい”というわけではないことは、皆さんも感じていることと思います。

 

ところで、1月12日にWHOのヨーロッパ支局が、「ヨーロッパの人口の半分以上が3月までにオミクロン株に感染する」という予測を発表しました。

 

またイギリスではジョンソン首相が、オミクロン株感染拡大の終息を発表して、マスク着用義務を撤廃しました。

 

同時に、イギリス保健相がインフルエンザと同等の感染症として扱う可能性についても言及しています。

 

これらは、コロナをインフルエンザのように扱い、”エンデミック”になっていくことへの期待を含めたもののようです。

 

確かにここまで感染がまん延してしまうと、コロナ感染の扱い方をもう一度考え直す必要がありそうです。

 

ただ、インフルエンザと同等に扱うためには、

 

「(インフルエンザのように)後遺症をそれほど懸念しなくてよいのか」

 

それとも、

 

(コロナ感染後の後遺症の)”ロング・コビット※1”の懸念は続くのか」

 

という問題点をクリアしておく必要があるのではないでしょうか。

※1 感染後、長期間続く症状(不安・うつ症状・睡眠障害・頭痛・認知症・倦怠感・脱毛・筋肉痛など)

 

というのも、感染者数と並行してロング・コビット症状を持つ方が増えれば、それはそれで社会にとって大きな痛手になるからです。

 

ちなみに、急性期の症状が”軽度”なオミクロン株ですが、ロング・コビットも”軽度”なのかはまだ不明なようです。

 

ニューヨーク・タイムズ紙によると、「オミクロン株による軽度の症状が病気が、ロング・コビットも軽度で済むことを示しているわけではない」と研究者たちが、注意喚起しているとのことです。

 

なぜなら、「オミクロン株感染の基本的な症状は、他の変異株による感染と類似しているため、長期的な影響も同様の可能性があるから」ということです。

 

そこで、今回は「ロング・コビットを防ぐ手段としてのワクチン接種の意味」についてご紹介します。

 

ワクチン接種は、ロング・コビットにも有効か?

 

まずは、イギリスの著名な医学誌に掲載された、イギリスからの報告です。

 

これは、2020年12月から2021年7月の間、ワクチンを少なくとも1回接種した124万人以上の電話アプリをデータを使っています。

 

これによると、ワクチンを2回接種した場合、未接種の人と比べるとロング・コビット(28日間以上続く症状)の出現率は半減していたそうです(図)。

https://doi.org/10.1016/S1473-3099(21)00460-6より引用・一部改編

 

次に、米国の1億5千万人以上のデータを分析した(査読前の)報告によると、コロナ感染前にワクチンを少なくとも1回接種した人は、ワクチン未接種の患者と比較して、12-20週間後のロング・コビットを起こす可能性が7〜10倍低かったそうです。

 

これらの結果から言えることとして、「ワクチン接種は、急性期の症状や重症化予防だけでなく、後遺症予防にもなる」ということです。

 

では、すでにコロナ感染してしまった人の場合にも、ワクチンをすすめた方がよいのでしょうか。

コロナ感染後のワクチン接種は意味があるのか?

現在CDCは、「コロナ感染している人のワクチン接種は、(症状があった場合)急性期から回復して、隔離を中止する基準を満たすまで延期する必要がある」ことを推奨しています。

 

しかし、コロナ感染後も早い時期にワクチン接種を進めた方が望ましいデータが出てきているようです。

 

先ほどご紹介した(査読前の)報告によると、コロナ感染から4週間以内に最初のワクチン接種を受けると、ロング・コビット症状を起こす可能性が4〜6倍低くなったとのことです。

 

さらに、感染後12週間以内であれば、感染後のワクチン接種が早ければ早いほど、ロング・コビットのリスクは低下する傾向にあったそうです。

 

また、英国国家統計局の調査によると、2021年2月から9月の間にロング・コビット症状を報告した18〜69歳の人々では、ワクチンの初回投与によって、ロングコビット症状の報告が13%低下※2していました。

 

また、2回目のワクチン接種でさらに9%低下※3したといこうことです。

 

※2,3 ただし、これは統計学的に有意ではなかったため、「傾向が見られた」と言える程度です

まとめ

昨年4月のことですが、米国イエール大学の専門家が次のような可能性に言及しています。

 

ワクチン接種によって…

 

・体内のコロナウイルスを排除する力が、強くなる可能性がある

 

・ロング・コビットの発生に関連するからだの免疫応答の一部を、減少させる可能性がある

 

これらが科学的に正しいかは、さらなる研究が必要のようです。

 

しかし、今回ご紹介した研究結果から次のことはいえそうです。

 

・感染前でも後でも、ワクチンを打っておくことが大事

 

・今からでも遅くない

 

オミクロン株感染の第6波はいずれ収まりますが、ウィズコロナは今後もしばらく続くと思われます。

 

私たちがコロナとうまく付き合う手段がワクチン以外にない現状、ワクチン接種(当面は3回※4)は、やはり進めたいところですね。

 

※4 4回目ワクチン接種に関してのコラムは ⇒こちら

   透析患者さんの4回目接種に関してのコラムは ⇒こちら

 

 

 

 

 

 

 

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