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第13回:12歳未満の子供にはワクチン接種以外の方法がないのか? ~学校生活再開に向けた海外の挑戦(下)~(2021.10.01更新)
[caption id="attachment_2560" align="alignright" width="325"] 構内検査で、鼻腔を拭う生徒(ニューヨークタイムズ紙より)[/caption]

前回のコラム(上)では、学校を通常通り行っていくために考えられた、test-to-stayの方法をご紹介しました。

 

前回コラムの最後にも書きましたが、今回ご紹介する論文結果をみると、コロナウイルス検査(抗原検査)に対する考え方が大きく変わるかもしれません。

 

では、その内容をご紹介していきましょう。

論文の内容とは?

この論文は、英国からの報告です。

 

中高生(11-18歳でワクチン未接種)を対象とし、86校がtest-to-stay法”介入群”と呼ばれます)を、76校が国のガイドラインに沿った方法”対照群”と呼ばれます)で、学校運営を3か月程度行いました。

 

・”介入群”の方法:濃厚接触者と判定された生徒・職員は、7日間以上の期間で、登校した際に最低5回の抗原迅速検査を受けなくてはならない。検査で陰性であればそのまま登校可、陽性であれば自宅待機となり、PCR検査へ進みます)

 

・”対照群”の方法:感染者の症状発現または無症候性の場合は検査陽性時点)前48時間以内に密接に接触した人は、10日間自宅待機する必要がある

 

(両群とも、「1週間に2回の迅速抗原検査はだれでも受けられる」という国の方針に沿っており、もし迅速抗原検査で陽性が出た場合には、速やかに自宅隔離となり、2日以内にPCR検査を受けなくてなりません。また、新型コロナウイルス感染を疑う症状が出た場合にも、自宅待機となり、速やかPCR検査を受ける必要があります。)

 

そして、test-to-stay法の効果を判断する方法として以下の数値を使いました。

 

(1)生徒・職員の中で、コロナに関連する欠席率

(2)生徒・職員のコロナ感染(PCR陽性)率

 

[caption id="attachment_2493" align="alignright" width="572"] 図1:Daily testing for contacts of individuals with SARS-CoV-2 infection and attendance and SARS-CoV-2 transmission in English secondary schools and colleges: an open-label, cluster-randomised trial より引用・一部改編[/caption]

まず図1が(1)の結果です。

 

・生徒のコロナ関連欠席率:”対照群”では、約1.8%、”介入群”では、1.47%であり、両群に有意な差はありませんでした。

 

・教師のコロナ関連欠席率:”対照群”では、約0.65%、”介入群”では、0.54%であり、両群に有意な差はありませんでした。

 

[caption id="attachment_2494" align="alignright" width="561"] 図2:Daily testing for contacts of individuals with SARS-CoV-2 infection and attendance and SARS-CoV-2 transmission in English secondary schools and colleges: an open-label, cluster-randomised trial より引用・一部改編[/caption]

次に図2が(2)の結果です。

 

PCR陽性率は、生徒も職員も、両群とも有意な差はありませんでした。

 

※そして結局はどちらの群でも、そのコミュニティ(全住民)で陽性者が増加すれば、同じ割合で増加し、減少すれば、同じ割合で減少たということです。

 

 

まとめますと、

 

濃厚接触者というだけで一律に隔離、登校停止をするのと、抗原検査を連日受けて陰性確認しながら登校を続けるのとでは、感染拡大という意味では差がなかった

 

ということです。

 

 

しかし、ここで少し疑問に思った方はいませんか?

 

皆さんもご存じかもしれませんが、「抗原検査はPCR検査よりも精度が低い」と言われています。

 

それでも、抗原検査が「自宅待機(隔離)」とほぼ同等の効果を発揮した理由とは何でしょうか?

迅速抗原検査の使い方

この論文によると、

 

迅速抗原検査の”感度”(病気である人が陽性になる度合い)が約53%という低い値でしたが、

 

迅速抗原検査の”特異度”(病気でない人が陰性になる度合い)が99.93%と非常に高い値だったことが理由とされています。

 

迅速抗原検査は、ウイルス量が多ければほぼ確実に陽性判定する(偽陰性がない)ため、

 

周囲に感染させるくらい多量のウイルスを持っている感染者を確実に特定できる

 

ということです。

 

一方で、

 

抗原検査では陰性になってしまう感染者(偽陰性)は、学校生活レベルの接触であれば周囲に感染させる可能性が低い

 

ということです(ワクチン接種者同士ならなおさら感染の可能性は低いかもしれません)

 

つまり、

 

学校生活や職場レベルの接触であれば、PCR検査のような”高価”で”時間もかかる”検査で陽性・陰性を判断しなくても、”安価”で”早い”迅速抗原検査で感染させるリスクは判断できるかもしれない

 

ということです。

 

(そのほか、音楽コンサートの入場前に、迅速抗原検査をすることが有効だったというスペインからの研究もあります。)

まとめ

これは言われてみると当たり前のことですが、(私個人的には)迅速抗原検査に対する見方が大きく変わる発見です。

 

これまで抗原検査は、「PCR検査よりも精度が劣っている」ことから、「PCR検査ができない場所・状況」や、「その場で早急に知りたいとき」という、

 

”とりあえず”目的で使用されていることが多いのが日本の実情です。

 

しかし、抗原検査の判定によって、周囲に感染させる可能性をある程度判断できるのであれば、ワクチン接種の有無を確認する以上に有用かもしれません。

 

もし学校生活だけでなく、職場も含めて様々な”場”において、迅速抗原検査が普及すれば、感染拡大を未然に防げる可能性があるということです。

 

諸外国と比べて検査体制が著しく進んでいない現在の日本において、この方法を各学校で行うのは現実的ではありません。

 

(一応、日本でも9月28日に「移動式PCR・抗原検査が解禁される」という報道がありました。)

 

仮にこれをやるとなれば、「だれが費用を負担するのか」、「だれが鼻腔に綿棒を入れて検体を採取するのか」、「だれが判定するのか」、「だれが責任をとるのか」、「人員が足りない」など、できない理由が数限りなく挙がるでしょう。

 

しかし、ワクチン接種できない子供たちの日常をどう進めていくのかを考えるのは、私たち大人の責務でもあります。

 

日本においても、コロナと付き合いながら学校教育を進めていくには「何ができるのか」、「どうすればできるのか」の議論がもう少しされるようになるとよいですね。

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