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第5回:モデルナワクチンは本当にデルタ株に強いのか?(2021.08.16更新)

先週、メディア等では新型コロナウイルスのデルタ株に対する効果が、ワクチンの種類によって異なるかもしれないという報道を見るようになりました。

 

この報道に至った理由は、メイヨークリニックというミネソタ州にある米国を代表する医療機関の一つが論文として発表しようとしている研究結果※1によるものです。(※1:詳しくいうと、この時点ではまだ論文としての承認は受けていない研究結果です)

 

この研究結果によると、ミネソタ州では2021年5月の時点で、新型コロナウイルス感染のうちデルタ株によるものが全体の0.7%だったのですが、7月に入ると70%まで急激に広がりました。

 

この時期のワクチンの感染※2予防効果を見てみると、6月まではモデルナ製を投与した人も、ファイザー製を投与した人も、感染予防効果がほぼ同等に維持されていたのですが、7月になるとモデルナ製を投与した人の感染予防効果が76%程度に維持されていた一方で、ファイザー製を投与した人は、感染予防効果が42%程度まで下がってしまったそうです。

 

つまり、7月の急激なデルタ株の拡大とともに、ファイザー製ワクチンの効果が急激に落ちてしまった可能性があるという結果でした。(※2:”感染”とは、少なくとも1度はPCR陽性になったかどうかで判断しています)

 

(ちなみに新聞等で掲載されている「今年初め時点での感染予防効果がファイザー製76%、モデルナ製86%」という書き方は論文の読み間違いです。原文にはこの数値は、今年1月から7月までのトータルでみた各ワクチンの予防効果の値として書かれています。)

 

ウェブ上では、「ワクチン接種時期の違い(ファイザー製は早い時期に接種した)なのでは?」という意見も散見されますが、2回目ワクチン接種の時期はファイザー製で2021年3月31日(中央値)、モデルナ製で2021年4月1日(中央値)とほぼ変わりはなかったようです。

 

どちらのワクチンもメッセンジャーRNAワクチンであり、根本的には大きな違いがないはずなのですが、モデルナ製ワクチンの方が全体的に(特にデルタ株では)感染予防効果が高そうであることは、この研究結果から確かに読み取れます。

 

また、カナダの別の報告でも、総じてモデルナ製の方がファイザー製よりも免疫反応が上回っており、やはりファイザー製よりもモデルナ製の方が有効性が高いのは、事実かもしれません。

 

両ワクチンの効果に差が出ている原因は未だ不明ですが、この研究結果には、以下の2点が原因の可能性として述べられています。

 

① そもそもモデルナ製は、1回投与量に含まれるメッセンジャーRNA量が多いこと(ファイザー製30μgに対して、モデルナ製は100μg)

②  ナノ粒子の脂質組成に違いがあること(私もよくわかりません) 

 

またモデルナ製の方が副反応が強いとされていますが、その副反応の強さは免疫応答の強さを示しており、高い感性予防効果を得ている証拠なのではないかとも書かれています。

 

ちなみに個人的なことで申し訳ないですが、この研究結果を読んで感じたことが2点あります。

 

1点目は、モデルナ製ワクチン予防効果の推移についてです。

 

ファイザー製の予防効果は、3月89%、4月88%、5月83%、6月82%と時間が過ぎるにつれて右肩下がりに効果が低下し、7月のデルタ株の拡大と共に42%と急激に低下してます。

 

「ワクチン投与後、時間がたつにつれてワクチン効果も薄れていき、そこにデルタ株で更に感染予防効果が低下した」という想定される得るシナリオに合致します。

 

一方でモデルナ製の予防効果は、3月90.9%、4月91.5%、5月93.1%、6月68%、7月76%でした。3-5月までは、非常に高い予防効果を示していたのにも関わらず、6月になって突然予防効果が下がる時期があったようです。

 

これは一体なぜでしょう?というのが私の疑問です。

 

しかし、残念ながらこのことについては特に触れられていないようなので、詳細は不明です。

 

2点目は、ワクチンの1回投与量についてです。

 

もし、1回投与量に含まれるメッセンジャーRNA量の違いが感染予防効果の原因だとしたら、ファイザー製ワクチンはモデルナ製ワクチンの3分の1以下の量で、それなりの効果を発揮していることになり、実は優れたワクチンかもしれないということです。

 

現在、日本ではファイザーワクチン製剤1瓶を6人分に分けて投与しています。

 

それを3-4人分に分ければ、1回投与量も格段に増えるので、ファイザーワクチンの予防効果もかなり高まる可能性があるかもしれない、と個人的に思うのです。

 

しかし、このことについても残念ながら特に今回の研究では、触れられてはいませんでした。

 

ここまでの本コラムを読んでいただくと、「ファイザー製はデルタ株に効果がないのか!」、「ワクチンはモデルナ製じゃないとダメだ!」と考えそうになるかもしれません。

 

 

しかし、一旦立ち止まってみましょう。

 

この研究では、ファイザー製がデルタ株に無効だったとは一言も書かれていません

 

むしろ感染による重症化予防効果(”入院が必要になったか”、”集中治療まで必要になったか”)については、どちらのワクチンを打っても(デルタ株を含めて)その効果にほとんど差はありませんでした

 

感染がここまで広がってきた現在、感染するかどうか(PCR陽性になるかどうか)だけではなく、重症化するかどうかが皆さんの健康にとって大きな課題です。

 

今回の報道でワクチンの選別が起こり、ワクチン接種が滞ってしまうことは、重症患者を減らして医療崩壊を防ぐ意味でも望ましいことではありません。

 

本コラムを書いた理由には、メディアの報道に踊らされずに1人でも多くの方々が、1日でも早くワクチンを接種できるよう、現時点で判明している事実を私なりにお伝えしたいという思いがあるからです。

 

本コラムが読んでくださった方々のご参考になれば幸いです。

 

※ 当院で取り扱っているワクチンは、ファイザー/ビオンテック製のものです。

 

 

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