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第58回:高血圧の新しい指標 「尿ナトカリ比」とは?

[2025.10.25]

「血圧を下げるには減塩が大事」と言われても…

 

実際にどのくらい塩分をとっているか、なかなかわかりませんね。


味つけは人それぞれ、食事内容も日によって違うため、「自分の塩分摂取量」を正確に把握するのは意外と難しいものです。


そんな中、最近注目されているのが、日本高血圧学会からも目標値が示された「尿ナトカリ比(Na/K比)という指標です


尿を使って、私たちの
塩分(ナトリウム)とカリウムのバランスを手軽に推定できる便利な方法として、多くの研究で血圧との関係が確かめられています。

1.なぜ“ナトカリ比”が注目されているの?

私たちが普段「塩分は控えめに」「野菜を多めに」と聞くのは、まさに塩分(ナトリウム/Na)や野菜由来のカリウム(K)が、血圧・腎臓・心血管系に影響するからです。

 

最近では、「ナトリウムだけ」でも「カリウムだけ」でもなく、『ナトリウムとカリウムのバランス(=尿中Na/K比)』 が、より血圧リスクを示す指標として注目されています。

 

以下、代表的な研究内容を簡単にまとめます。

 

☑️ 世界52都市・32ヶ国を対象に行われた大規模研究では、「尿ナトリウム/カリウム比(Na/K比)が高いほど”上の血圧(収縮期血圧)”が高く」、「年齢が上がっていくとに血圧上昇の傾きも大きくなる」と報告されました。

 

☑️ また、2021年に発表されたメタ解析では「尿Na/K比が低いほど血圧の低さと関連している」と示されています。

 

☑️ さらに、日本からの研究でも、「スポット尿(1回の採尿)での尿Na/K比の変化が長期的に血圧変化と関連する」と報告されています。 

 

これらの研究から、ナトリウムとカリウムの“バランス”=尿Na/K比が、将来の高血圧の指標になり得るいう理解が広まりつつあります。


そのため、単に「塩分減らす」というアプローチだけでなく、「Na/K比を意識する」という発想が増えています。

2.尿ナトリウム/カリウム比とは? ~その意味と測定方法~

🌱 “尿ナトリウム/カリウム比”の意味

尿中ナトリウム/カリウム比とは、尿に排泄されたナトリウム量をカリウム量で割った比率のことです。

 

具体的には:

尿 Na/K 比 = 尿中ナトリウム濃度 ÷ 尿中カリウム濃度

 

この数値が高いということは、「ナトリウム(塩分)が比較的多く、カリウムが比較的少ないという食習慣・体の状態が反映されている」可能性があるわけです。


逆に、比率が低ければ「ナトリウム控えめ・カリウム充分」というバランスが、比較的良好であると思われます。

 

🌱 なぜ「比率」が重要なの?

先程ご紹介した研究でも、「ナトリウム/カリウム比は、”ナトリウムだけ”・”カリウムだけ”よりも血圧等との関連が強い可能性がある」といわれています。

 

なぜ単にナトリウムやカリウムの値だけをみるのではなく、“比率”が注目されるのでしょう?

 

その理由は:

 

1️⃣ ナトリウム摂取が多いと、主に”体液量増加”・”血管収縮”などのメカニズムで血圧が上がりやすい

 

2️⃣ 一方でカリウム摂取が多いと、”ナトリウムの腎臓からの排泄促進”・”血管拡張”・”細胞内のナトリウムとの交換が進む”などで、血圧を下げる方向に働く

 

3️⃣ つまり、「ナトリウムが多く・カリウムが少ない」という“アンバランスな環境”があると、血圧上昇リスクがより強まり「バランス=比率」でみた方が実態に近いということです。

🌱  測定・活用のポイント

✅ 理想的には 「24時間分の尿を採って測定する」のが、最も正確に反映しているとされます。

 

✅ ただ、実際の検査や健診の場では、(24時間尿は手間がかかるため)スポット尿(朝一番・随時採尿)から推定する方法も報告されています。

 

✅ 尿ナトリウム/カリウム比の“目安”として、WHOなどでは「1:1(モル比=1)以下」を理想とする考え方も出ています。

 

✅ 日本高血圧学会からは、「理想は2未満、まずは4未満を目標に」とされています。

 

3.ただし注意!腎不全では「カリウム過剰」に注意を

カリウムは血圧には良い働きをしますが、腎機能が低下している方では話が少し違います。


腎臓はカリウムを尿に排出する役割を持ってるため、腎機能が悪くなるとその能力が低下し、


血液中のカリウム(高カリウム血症)が危険なレベルまで上昇することがあります。

 

 高カリウム血症の症状

💥 しびれや脱力感が初期症状

 

💥 さらに進むと、不整脈や心停止の原因になる(非常に怖い!!)

 

🪴 腎不全・透析患者さんでの注意ポイント

✨ 腎不全(特にeGFR30 mL/分/1.73m²以下)や透析中の方では、カリウム摂取量を「むやみに増やす」ことはとても危険なので、主治医とよく相談しましょう!

 

✨ 生野菜・果物を“カリウム源”として推奨される場面もありますが、腎機能低下時には“カリウムが多い野菜・果物”を避ける・調理法でカリウムを減らす(アク抜き・ゆでこぼし)といった工夫も必要になります。

 

✨ 透析患者さんでは、摂取したカリウムがそのまま体に貯留してしまいます。 高カリウム血症は命にも関わってくるので、注意しましょう!!

 

4.まとめ ―あなたのナトリウム/カリウムバランスを”ととのえよう”

 

✅ 尿ナトリウム/カリウム比は、「塩分のとりすぎ」「野菜不足」などを反映する高血圧の指標になり得ます。

 

✅ 値が高いほど血圧が上がりやすく、将来の高血圧リスクが高いといわれています。

 

✅ 理想は「2未満」、まずは「4未満」を目指しましょう!

 

✅ 腎機能が低下している人、透析中の人は、カリウム摂取は要注意!!

 

血圧の治療は、薬を飲むだけではなく、食事・生活習慣の積み重ね大切です。

 

ナトリウムを少し控え、野菜・果物を意識して始めてみませんか?

 

当院でも、尿Na/K比チェックも行うことができます。ぜひお気軽にご相談ください。

 

 

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