第56回:痔(じ)の新たなリスク ~それはスマホ~
いまやスマートフォン(スマホ)は生活に欠かせない存在ですね。
トイレに入っても、ニュースを読んだり、SNSを見たり、暇つぶしをしたり…
かくいう私もスマホを手に、長時間居座ってしまうタイプです、、、
実はこの「トイレでのスマホ習慣」が、痔(特に「いぼ痔」)のリスクを高める可能性がある、という研究が発表されました。
今回はその研究内容をご紹介します。
背景
痔は意外と身近な病気で、実は多くの人が悩んでいます。
日本でも約3人に一人が一生のうちで一度は「痔」を経験するそうです。
これまで痔のリスクとしては、
・便秘や排便時の強いいきみ
・食物繊維不足
・妊娠による骨盤内の圧力上昇
・肥満や運動不足
・長時間トイレ(新聞をよむことによる)
などが知られていました。
しかし、現代では、「痔」の原因として、新たに「スマホ」が加わることになるかもしれません。
結果
この研究は、米国ボストンの病院で大腸内視鏡検査を受ける125人の成人を対象に行われました。
結果は次のとおりです。
・ スマホを使う人は、使わない人よりも 若い(平均年齢55歳 vs 62歳)
・ 66%の人がトイレでスマホを使用していた
図1:Smartphone use on the toilet and the risk of hemorrhoidsより引用
・ スマホ利用者はトイレに長く座る傾向があり、37%以上が1回5分以上滞在していた(図1)
図2:Smartphone use on the toilet and the risk of hemorrhoidsより引用
・ トイレでの主なスマホ利用内容は「ニュースを読む(54%)」 「SNS(44%)」(図2)
・ 大腸内視鏡で 43%の参加者に痔が確認された
・ (多変量解析の結果)トイレでスマホを使う人は痔のリスクが46%高い(図3)
図3:Smartphone use on the toilet and the risk of hemorrhoidsより引用
・ ”いきみ”による、「痔」のリスク上昇は、たったの10%程度(図3)
・ 「食物繊維不足」は「痔」のリスクが2倍以上!(図3)
つまり、「トイレでの長時間滞在は痔のリスクを高める強い要因」であり、
「”いきむ”以上に、座り続けること自体が「痔」のリスクを高める可能性がある」ということです。
椅子とトイレ、何が違う?
ちなみに、昔から普段の椅子やソファに長時間座っていても、ある程度「痔」になるリスクは高といわれていました。
しかし、椅子やソファに座っているときは、骨盤底がクッションによって支えられた状態になります。
一方で、トイレ便座はポッカリ穴が空いているため、おしり部分(骨盤底)が宙吊り状態となります。
この状態が肛門部に圧をかけやすくなるため、周囲の充血が起こり、「痔(イボ痔)」の原因になるのだそうです。
まとめ
・ トイレでのスマホ利用は、滞在時間を延ばし、痔のリスクを1.5倍程度高める可能性がある
・ ”いきみ”は、「痔」のリスクを10%程度しか上げない
・ 食物繊維不足は、「痔」のリスクがかなり高まる
ということは、「”食物繊維不足”の食生活で便秘がちな人が、トイレで”いきみ”ながら、”スマホ”を見て長居する」パターンは、かなりよくなさそうです。
ちなみに、今回の著者たちは「トイレでのスマホ利用は5分以内にとどめる」こと、「トイレの際は、タイマーを使用すること」を提案しています。
トイレに座ってタイマーをかけると、落ち着いて出るものも、出なくなってしまう気もしますが、、、
とりあえず、私もムダにトイレに長居するのはやめてみようかと思います。
