第40回:歩いて認知症を予防をしよう! ~歩行数と認知症の関係~
今回は、認知症と歩行数についての話題を書きたいと思います。
運動が健康全般によいことはみなさんもよくご存じかと思います。
ちなみに2013年から厚生労働省より発表されている「健康日本21」によると、1日1万歩程度(男性:9,200歩、女性:8,300歩)の運動が目標とされています。
この”1日1万歩”、実際に達成させようとすると(特に車社会の茨城県では)中々大変です💦。
「今日はけっこう歩いたな」と思いつつ、スマートフォンや歩数計を見ると、8,000歩程度(泣)なんてことも多くあるのではないでしょうか。
そして、1日1万歩に到達しない日が続くと、だんだん面倒になってしまい、いつの間にかどうでもよくなってしまうものです。
でも、「1日4千歩あるくと、認知症のリスクが25%下がり、1万歩あるけば、認知症のリスクが50%も下がる」と聞けば、どうでしょう?
ヒトは「具体的な効果が示されていない高い目標」よりも、「具体的な効果が示された手軽な目標」の方が、やる気が起きるものです。
さらに、「やらないよりはやった方がマシ」と分かれば、多少はやる気も起こるのではないでしょうか?
今回は、この認知症と歩行数の関係についての研究結果をご紹介します。
研究の方法
今回の研究は、世界5大医学雑誌の一つの神経分野に掲載されたものです。
英国の78,000人もの参加者に腕に歩数計を装着してもらい、約7年間追跡した中で、認知症発症と歩行数・歩行強度(歩くスピード)の関係を調べました。
参加者の平均年齢は61歳(40-79歳)と比較的若め(!?)で、もちろん最初は認知症の人はいませんでした。
結果
では、結果をご紹介しましょう。
グラフAを見ていただくと、1日総歩行数が1万歩弱(9,800歩)のときに最も認知症になりにくい(リスクが約50%低下する)ことがわかります。
そして4,000 歩程度(3,800歩)でも、リスクが約25%低下するようです。
つまりこのグラフAによれば、1日1万歩程度までは、歩けば歩くほど、認知症のリスクを最大50%程度下げる効果があるということです。
一方、このグラフはいわゆる”Jカーブ”を描いています。
これが意味するところは、1日1万歩以上になると、そのリスク低減効果が弱まってしまうということです。
ちなみにこの論文では、歩行時の強度(スピード)を2種類に分けた認知症のリスクについても分析しています(グラフB、C)。
その2種類とは・・
- 室内歩行レベルの強度(1分間に40歩未満)
- 軽い運動以上の強度(1分間に40歩以上)
これによると、①室内歩行レベルの強度での歩行では、1日に3,700歩程度歩くと認知症予防効果が高く(42%のリスク低下)得られることが分かります(グラフB)。
一方、②軽い運動以上の強度での歩行の場合、1日に6,300歩程度歩くと認知症予防効果が高く(約57%のリスク低下)得られるようです(グラフC)。
そして、①も②もやはり“Jカーブ”を描いているので、「やりすぎても効果は薄くなる」ということがわかります。
そして最後に、「1日のうちで最も歩行速度が速い30分間の平均スピードはどれくらいだと良いのか?」についても示されています(グラフD)。
グラフDを見て頂くと、1分間に約100歩(112歩)程度にするだけで、約62%ものリスク低下につながるそうです。
1分間に200歩がジョギング程度のスピードですので、100歩はちょっと早歩きレベルです。
さらに重要なことは、この結果は「まとまった30分間である必要がない」ことです。
1日の中で「合計30分程度早歩きを意識すればOK」なのです。
まとめ
結果をまとめてみると、認知症予防に最もよい歩き方は・・
- 1日約9,800歩程度歩くこと
- そのうち3,800歩は室内でのんびり歩行
- 6,000歩程度は少しスピードを上げて歩く
- 6,000歩の中で合わせて30分程度は1分間に100歩程度の速度の早歩きをする
ということになります。
ところかわって日本でも実は似たような研究が行われています。
群馬県中之条町で2,000年から現在まで行われている“中之条町研究”というものです。
これによると、「1日8,000歩・速歩き20分」が様々な病気に対する予防に最適で、
認知症においては、「1日5,000歩・速歩き7.5分」がよいそうです。
ただ先にも書いた通り、シンプルに「やらないよりはやった方がマシ」と考えることが大事です。
今回の研究結果によると、「1日3,800歩程度でも、認知症のリスクは25%も下がる」のです。
ですから、「日々少しでも多く歩くこと、そして気づいたら早歩きを意識すること」で十分かと思います。
明日からでも、ちょっと意識しながら“認知症予防”してみませんか?