第32回:コロナ感染した後に知っておきたいこと ~再感染はある? ワクチンは必要?~
日本におけるコロナの累計感染者数が1,500万人を超えました。
(複数回感染した人、訪日外国人も含まれてはいますが)ざっくりと言えば日本在住者の10人に1人以上はコロナ感染したことになります。
東京にいたっては、6-7人に1人は感染経験があることになります。
これだけ日本中の人が感染を経験すると、感染後についての様々な疑問も出てくるのではないでしょうか。
しかし、意外と感染後についての情報は少ないというのが個人的な印象です。
そこで、今回はおもな感染後の疑問点について、現時点でわかっている範囲でご紹介したい思います。
Q1:一度コロナ感染しても再感染するの?
結論からいうと、(残念ながら)オミクロン株の場合には、再感染します。
実はオミクロン株以前(アルファ・ベータ・デルタ)は、(ワクチン未接種・接種済み問わず)一度感染すると、再感染のリスクは85%以上減るというカタールからのデータがあります。
その他ニカラグアからのデータでも、ワクチン未接種者において70%弱の再感染予防効果が示されており、再感染の心配はあまりされていませんでした。
しかしオミクロン株の出現によって、感染による再感染予防効果が著しく減ってしまったようです。
では、それに関する研究データをご紹介しましょう。
<オミクロン株感染における再感染予防効果>
7月に発表されたカタールからの研究データでは、オミクロン株(BA.1、BA.2)に関して、感染後90日(3カ月)の再感染率を調べています。
これによると、2回のワクチンの接種(ファイザーもモデルナも)では、オミクロン株の感染予防効果はほぼゼロです(グラフ1の緑)。
一方、ワクチンを接種せずに感染した場合、90日間は約50%の再感染予防効果がありました(グラフ1の青)。
次に、ワクチンを接種した人が、感染した場合についてみてみましょう。
まずファイザーワクチン接種後の場合、
「2回のワクチン接種+感染」と「3回のワクチン接種」は、ほぼ同等の再感染予防効果(55%前後)を示しています(グラフ2の上段)。
一方でモデルナワクチンの場合には、
「3回のワクチン接種」の方が、「2回接種+感染」よりはやや感染予防効果が高かったようです(グラフ2の下段)。
ここからも、(以前のコラムでもご紹介した通り)「モデルナワクチンのブースター接種は効果が高い」といえそうです。
この論文において、「“最強“の感染予防効果」とされていたのが、やはり「3回ワクチン接種+感染」です。
このパターンでは、どちらのワクチンであっても90日間は70%以上の感染予防効果を示しています(グラフ2の赤)。
3回接種したにもかかわらず結局感染してしまい、悔しい思いをした方もいらっしゃるかと思いますが、少し救われる結果ですね。
Q2:感染してからどれくらい感染予防効果が持続するの?
先ほどご紹介した研究データは、90日間(3カ月)の再感染率を調べたものですが、感染後の再感染予防効果は実際どれくらい持続するものなのでしょうか。
昨年末に発表された遺伝子解析によって推定した研究データによると、再感染は感染後3カ月頃より出現する可能性があるといわれています。
しかしこのデータ、オミクロン株以前のものなので、現状と合致するものではなさそうです。
一方、今年2月にデンマークのグループより発表された未査読の研究データによると、BA.1の再感染が約26日後(中央値)、BA.2の再感染が約36日後(中央値)に認めたとのことです(グラフ3)。
つまり、オミクロン株は感染後1か月程度で再感染する危険性が出てくると言えるかもしれません。
Q3:再感染した場合、症状は軽症?重症?
現時点では、「一度感染したことがある体内では、免疫系が記憶されており、初回感染よりも軽症で済むことが多い」という見解が多くの科学者から得られているようです。
オミクロン株以前のデータによると、再感染による重症化リスクは、初感染による重症化リスクと比べて、約1%程度まで下がるといわれています。
ただし、これらの見解やデータは「重症化するかどうか」のはなしです。
いわゆる軽症の症状である”発熱”・”のどの痛み”・”せき”などが、「再感染ではない」というわけではないことに注意が必要です。
Q4:感染してもワクチンは接種した方がよいの?
これについては、以前のコラムでもご紹介した通り、現在も「接種した方がよい」といわれています。
その理由として、2つが挙げられます。
① ワクチンが体内の抗体レベルを安定的に上げるため、再感染による重症化を防ぐ
② ロングコビットと呼ばれる、感染後遺症の予防効果も言われている
<① ワクチン接種が体内の抗体レベルを安定的に上げるため、再感染による重症化を防ぐ>
ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたミシガン大学の疫学者のお話によると、
感染による抗体反応は、”吸入したウイルスの量”、”基礎疾患があるかどうか”、”症状の重症度”などの要因によって大きく異なるため、”コロナ感染”と一言でいっても、その抗体産生量はかなり不安定なのだそうです。
一方、ワクチン接種による抗体産生量は、すでに科学的根拠が数多くある通り、(年齢や基礎疾患で多少の差があるものの)かなり安定しているといわれています。
そのため、感染したとしても重症化という意味では、「ワクチン接種した方が間違いない」といえるわけです。
<② ロングコビットと呼ばれる、感染後遺症の予防効果も言われている>
これについては、以前のコラムに書きましたので、ご参照ください。
Q5:感染後にワクチン接種を行うタイミングはいつがいいの?
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、「感染による隔離期間が終了するまで接種を待つ必要がある」と書かれています。
さらに、「感染後のワクチン接種は3カ月程度まで遅らせることができる」とも書かれています。
これは先ほどご紹介した論文のように、感染後3カ月程度は、再感染のリスクが低いとされていたためです。
しかしオミクロン株の場合、感染後1か月程度しか、再感染予防効果がない可能性もあるため、感染後も早めに接種することが望ましいと考えられます。
実際にCDCのステートメントには、「重症化リスクや、変異株、地域の流行具合によって接種を早めることも考慮される」とも書かれているのです。
また、以前のコラムでもご紹介した通り、早めに接種することがコロナ感染後遺症(ロング・コビット)を減らすよい手段になり得るともいわれています。
まとめ
ここまでご紹介した内容をまとめてみましょう。
・オミクロン株感染の場合、再感染は十分ある
・オミクロン株は、感染後1か月頃より再感染のリスクがある
・感染予防効果が最も高いのは、3回のワクチン接種+感染である(感染後90日以内の場合)
・再感染は軽症ですむことが多いが、無症状とは限らない
・感染後であってもワクチンは接種した方がよい
・感染後ワクチン接種のタイミングは、”早め”が望ましい
今後のご参考になれば幸いです。