第18回:オミクロン株感染の特徴とは? ~南アフリカ震源地からのレポート~
コロナウイルスのオミクロン変異株が、ここ1週間ほどで突然話題になっています。
スパイク蛋白の変異が多いことや、感染性が強いことが言われており、世界的に警戒されています。
イギリスの医学雑誌に掲載された南アフリカからの報告によると、オミクロン株による感染者数が急激に増えているようです(グラフ1)。
しかし、実際の感染者の特徴や、重症化の具合は、まだわからないことが多いのが現状です。
そのような中、12月4日にオミクロン株の震源地と言われている南アフリカのハウテン州ツワネ地区から、感染者の特徴を示したレポートが発表されましたので、ご紹介したいと思います。
オミクロン株感染の特徴
このレポートによると、グラフ2のようにツワネ地区のコロナウイルス感染者数は、11月29日から12月3日の間に急激に増加したそうです。
さらに南アフリカ国立伝染病研究所で、その間に陽性となったコロナウイルスの遺伝子を検査したところ、ほぼすべてが新型の変異株※だったとのことです。
(※PCR検査法の理由で、全てがオミクロン変異株と特定されたわけではありません)
12月2日の時点での入院患者さんの特徴をあらわしたのが、表1です。
これを見ると、66%の入院患者が酸素投与を必要としていないことがわかります。
14人の患者は酸素を投与されていますが、コロナ肺炎による酸素投与患者はそのうち9人だったとのことです。(他は心不全や肺気腫などが理由)
また、コロナ専門病棟に入院した38人のワクチン接種状況について調べたものが、表2です。
38人のうち、6人(16%)がワクチン接種済で、24人(63%)がワクチン未接種でした。(8人がワクチン接種状況不明)
コロナ肺炎の9人の患者のうち、8人(89%)はワクチン未接種で、1人は肺気腫があったために酸素を投与していたそうです。
つまり、「感染者の多くがワクチン未接種」で、「酸素投与が必要な肺炎になる例も、ワクチン未接種の場合がほとんど」ということです。
オミクロン変異株感染は重症化しやすいのか?
重症化しやすいかどうかを見ると指標として、
①入院日数
②集中治療室入室の割合
③死亡率
が示されています。
①入院日数
コロナ禍の過去18か月の平均入院日数が8.5日だったのに対して、過去2週間にコロナ専門病棟に入院したコロナ陽性患者の平均入院日数は2.8日とはるかに短かったとのことです。
②集中治療室入室の割合
入院患者の割合を病棟ごとに見たものがグラフ3です。
それによると、ICUが2人、HCU(ICUよりも重症度が低い)が63人、一般病棟が101人だったそうです。
HCU患者数が多いように感じますが、大部分がコロナ以外の原因によるもので、4人がコロナ肺炎によるもだったようです。
③死亡率
今回のレポートによると、今のところオミクロン株による第4波(南アフリカの場合は第4波です)では、死亡率は上昇していないそうです(グラフ4)。
しかしこれについては、「感染と死亡の間にはタイムラグがあるため、今後2週間ではっきりするだろう」とのことです。
まとめ
以上の結果を簡単にまとめてみましょう。
① オミクロン株の感染力は高そうである
② オミクロン株はワクチン接種済みであれば、重症化はかなり防げると思われる
③ 「オミクロン株は重症化しにくい」といわれるが、ワクチン未接種は重症化のリスクが残る
④ 死亡率はまだ不明確だが、デルタ株のような死亡率にはならない可能性がある
そして、このレポートにはこのように書かれています。
「コロナ病棟とは、酸素供給の音や人工呼吸器の警報音が常に鳴っていると思っていた。そのような音が聞こえない静かなコロナ病棟は、これまであった3波とは全く違う光景である」
まだわからないことばかりですが、少し安心できる内容のようです。
南アフリカと日本とでは、人口の年齢分布も異なり、医療提供体制や人種も大きく異なるため、一概に当てはめることはできません。
しかし、日本も早晩第6波がやってくると思われ、一つの参考になりそうですね。