つらい透析中の“こむら返り”、その原因と対策とは?
人工透析まめ知識、今回は透析中に悩まされる方も多い「こむら返り」にの話題です。
透析中に突然ふくらはぎがギューッとつって、思わず顔をしかめたことはありませんか?
それは「こむら返り」と呼ばれる筋肉のけいれんです。
多くの透析患者さんが経験する、意外とよくある困りごとのひとつです。
今回はその原因と対策について、腎臓・透析専門医がご紹介します。
1.こむら返りってどんな状態?
「こむら返り」とは、筋肉(ふくらはぎなど)が急にけいれんして強く縮まり、激しい痛みを伴う状態をいいます。
一般的には、運動時や就寝時、暑い時期などに起こりやすいとされますが、
透析患者さんの場合は、透析中の後半に起こることが多く、「足が勝手につってしまって痛い!」というつらさがあります。
一般的には数十秒〜数分でおさまりますが、痛みがしばらく残ることもあり、透析中の大きなストレスの一つです。
2.なぜ透析中に起こりやすいの?
透析患者さんのこむら返りには、以下のような原因が関係しています
急激な体液の変化
透析では、体にたまった余分な水分を、数時間で一気に抜く(除水といいます)ことが原因としてあります。
これにより血液の濃さ(浸透圧)が急に変化し、筋肉に必要な水分や電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)バランスが崩れてしまうのです。
血圧の低下
透析中に血圧が下がると、筋肉に十分な血流が届かず、筋肉に必要な酸素が不足してけいれんが起きやすくなります。
電解質の急な変化の乱れ
特にカリウムやナトリウム、カルシウムなどの変化は、筋肉の収縮に大きく関わります。
透析でこれらの電解質が一気に補正されると、けいれんの原因になります。
3.こむら返りを防ぐためにできること
完全に防ぐことは難しいですが、次のような工夫で起こりにくくできます。
除水量を見直す
一度の透析で引く水分量(除水量)が多いと、こむら返りが起こりやすくなります。
日々の体重管理や塩分制限を意識し、できるだけ“透析間の体重増加を減らす”ことが大切です。
血圧の変化に注意
透析中に急に血圧が下がる場合は、透析速度の調整やドライウェイト(目標体重)の見直し、血圧の薬の調整などが必要な場合があります。
遠慮せずに医療スタッフと相談しましょう。
温める・ストレッチする
足元を冷やさないよう靴下をはいたり、ストレッチをして筋肉を柔らかく保つことで、こむら返りの頻度を減らすことが期待できます。
透析中の運動(腎臓リハビリ)も有効です。
4.薬や補助的な対策もある
つらいこむら返りが毎回のように起こる場合は、薬や透析中の過ごし方を変えることで、症状が軽くなることもあります。
以下のような方法があります。
漢方薬:芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
もっともよく使われる薬のひとつです。
芍薬(しゃくやく)という植物の根と、甘草(かんぞう)という生薬が含まれており、筋肉の緊張をゆるめ、けいれんを抑える作用があります。
透析中につった時にその場で飲む人もいれば、毎回のようにつる方であれば、あらかじめ飲んでおく人もいます。
カルニチンの補充
透析患者さんは「カルニチン」と呼ばれる、アミノ酸の一種が不足しがちです。
カルニチン不足は、筋力低下や疲労感、こむら返りの原因になり得るため、補充することでこむら返りの発生頻度を減らすことが期待できます。
ただ、効果が出てくるまでに補充開始してから1-2ヶ月程度かかるため、即効性は期待できません。
一般的には、週3回透析後に注射薬で補充します。
伸筋訓練やストレッチ体操
治療ではありませんが、日頃から足の筋肉を柔らかく保つことで、こむら返りを予防できます。
透析中の運動(腎臓リハビリ)やストレッチを行うことで改善することもあります。
当院では、エルゴメーター(自転車漕ぎ)や、オリジナル動画によるストレッチ運動も患者さんのご希望に応じて行っています。
圧着ソックス(弾性ストッキング)
軽めの圧力で足の血流をサポートするソックスです。
筋肉の疲労を減らし、けいれんを予防する効果が期待できます。
体を温める(特に足元)
透析室が冷えていると、足の血流が悪くなり、こむら返りが起こりやすくなります。
ブランケットやレッグウォーマーなどで足を温めるだけでも、症状の軽減が期待できます。
5.つらい症状は「がまんしない」で
こむら返りは一時的なものですが、毎回の透析で繰り返し起きると、通院自体がつらくなってしまいます。
「毎回看護師さんを呼ぶのも気が引けるし、我慢しなきゃ…」ではなく、症状があれば気軽に医療スタッフに相談してください。
ちょっとした透析条件の変更や、日々の生活の工夫で、大きく改善することもあります。
6.まとめ
こむら返りは、命にかかわる症状ではないかもしれませんが、毎回の透析時間を「つらい時間」にしてしまう大きな要因です。
だからこそ、小さな困りごともきちんと向き合って、少しずつ解決していくことが大切です。
「また今日も楽に透析を受けられた」と思える日を増やしていきましょう。
