これって飲んで大丈夫? 慢性腎臓病の人が気をつけたい薬とは?
1. 「腎臓と薬」の関係とは?
腎臓は、血液の中の老廃物をろ過する「体のフィルター」です。
でも実は、「薬の処理」でも大切な働きをしています。
私たちが飲む薬の多くは、体の中で肝臓や腎臓を通して分解され、尿として排出されます。
そのため、腎臓の機能が弱っている人では、薬が体に長く残りやすく、副作用が強く出ることがあるのです。
腎臓を守るためには、避けたほうがいい薬や、注意して使うべき薬がありますので、その代表例と「気をつけたいこと」をご紹介します。
2. 腎臓に負担をかけやすい薬
(1)痛み止め(NSAIDs)
市販でも売られているロキソニン®などの痛み止めは、腎臓に負担をかけやすい代表格です。
これらは腎臓に向かう血流を減らしてしまう作用があり、特に脱水時や高齢者、糖尿病・高血圧を持つ人では、急性腎障害(AKI)を起こすことがあります。
どうしても痛み止めが必要な場合は、アセトアミノフェン(カロナール®など)が比較的安全です。
慢性腎臓病の方は、自己判断での使用は絶対に避けて、主治医など相談しましょう。
(2)抗菌薬(抗生物質)
抗生物質には、腎臓から排泄されるものが多く、腎臓が悪い方は体に溜まりやすくなります。
そのため、腎機能に応じて量を減らす必要があるのです。
クリニックなどで処方されることの多い、内服の抗菌薬も、減量の必要性があるものばかりです。
その他、アミノグリコシド系(ゲンタマイシンなど)やバンコマイシンなどは、腎臓に直接ダメージを与えることがあります。
抗菌薬は、量を間違えると薬が体にたまり、副作用が強く出たり腎機能をさらに悪化させたりすることもありますので注意しましょう。
(3)抗ウイルス薬(帯状疱疹・ヘルペス治療薬)
帯状疱疹はなるべく早く治療することが大切です。
しかし、帯状疱疹で使われる抗ウイルス薬(ゾビラックス®、バルトレックス®、ファムビル®など)は、体内を通った後にほぼすべて腎臓から排泄されます。
腎機能が低下している人が通常と同じ量を飲むと、薬が体にたまってしまい、意識障害、せん妄、けいれんなどの中枢神経症状が出ることがあり、非常に危険な薬になってしまいます。
腎機能に応じて、内服量や間隔を調整する必要があるので、処方してもらう際は、必ず腎臓が悪いことを伝えましょう。
また、最近は腎臓が悪い人でも安全に使える薬(アメナリーフ®など)がありますので、それを選択してもらうとよいでしょう。
(4)骨粗鬆症治療薬(活性型ビタミンD製剤など)
骨粗鬆症の治療や予防で、ビタミンD製剤を内服されている方も少なくありません。
これらの薬も慢性腎臓病の人にとっては注意が必要です。
腎臓の機能が落ちると、カルシウムやリンのバランスが崩れやすくなります。
そのため、活性型ビタミンD製剤(エディロール®など)を飲むと、血中カルシウムが上がりすぎる「高カルシウム血症」を起こすことがあります。
この状態になると、腎臓の血流が減り、さらに腎機能を悪化させることもあります。
「高カルシウム血症」は、のどの渇き、だるさ、食欲低下などが初期症状として現れ、最終的にな意識障害まで起こすこともあります。
もし、慢性腎臓病をお持ちでビタミンD製剤を内服されている場合には、定期的に血液検査でカルシウム・リン・クレアチニンを確認してもらいましょう。
(5)糖尿病や高血圧の薬も「注意して使う」
糖尿病の薬の中では、スルホニル尿素(SU)薬、メトホルミンと呼ばれる薬は腎機能がかなり悪い場合に使えなくなることがあります。
これらは、低血糖のリスクが上昇したり、乳酸アシドーシスと呼ばれる状態になる危険性が高まるので注意が必要です。
また、高血圧治療薬のACE阻害薬やARBは腎臓を守る薬としても使われますが、飲み始めて初期には腎機能が低下する(クレアチニンが少し上がる)ことがあるため、
使い慣れた医師による使用適否の判断が必要になります。
(6)利尿薬(むくみ・高血圧の薬)
心臓が悪い人や腎臓が悪い人、むくみがひどい人によく処方される利尿薬。
これらも注意が必要です。
特にサイアザイド系と呼ばれる利尿薬は高血圧の治療でも使われますが、腎臓へ向かう血液量を低下させてしまい、腎機能が悪くなってしまうことがあります。
また、フロセミド(ラシックス®)などの利尿薬は、腎臓病の方が尿量を確保するための治療にも使われますが、使いすぎると逆に腎機能を下げることがあります。
(7)造影剤(検査で使う薬)
CTや心臓カテーテル検査などで使われる造影剤も注意が必要です。
腎臓から排泄されるため、もともと腎機能が落ちている人では、造影剤腎症を起こすおそれがあります。
最近は、造影剤を使う前に腎機能をチェックすることが、医療従事者の間でも標準になってきています。
造影剤を使う検査前後の水分補給(点滴)を十分に行うことが大切となります。
(8)漢方薬・健康食品・サプリメント
漢方薬や健康食品は、「自然のものだから安全」と思われがちですが、腎臓病の方では注意が必要です。
たとえば甘草(カンゾウ)を含む漢方薬は、長く飲むと低カリウム血症を起こすことがあります。
また、サプリメントも注意が必要です。
サプリメントに含まれる添加物やさまざな成分は、腎臓が悪い人では体にたまりやすく、思わぬ合併症につながります。
腎臓が悪い方は、必ず内服する前に主治医に相談しましょう。
3. 腎臓病の人が薬を飲むときに気をつけたいこと
医師に「腎臓が悪い」と伝える
薬を処方してもらったり、市販薬を買うときは、必ず「腎臓が悪い」「透析をしている」と伝えましょう。
おくすり手帳を持っていく
薬によって腎臓が悪くなる理由は、余計な薬を多く飲んでしまったり(過量内服)や、
薬同士の作用(相互作用)によるものがほとんどです。
ご自身が内服している薬の内容がまとまっている「おくすり手帳」があるとそのようなリスクも減らすことができます。
定期的に血液検査を
薬によっては、知らず知らずのうちに腎機能が悪くなってしまうことがあります。
定期的に血清クレアチニン、eGFR、尿検査をチェックすることで安全に続けられます。
4. 「腎臓病の人が使ってもよい薬」もある
腎臓病の方にとって、推奨される薬も増えてきています。
たとえば糖尿病の治療薬として発売されたSGLT2阻害薬(例:フォシーガ®、ジャディアンス®など)が腎臓を守る効果を持つことが分かっています。
また、血圧の薬(ACE阻害薬・ARB)も、腎臓への血流を安定させ、尿タンパクを減らす働きがあります。
このような腎臓を守る薬もあるということを知っておくと安心です。
5. まとめ:薬と上手につきあうコツ
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腎臓の働きが落ちると、薬が体に残りやすくなります。
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痛み止め(NSAIDs)や一部の抗生物質、抗ウイルス薬などは注意が必要です。
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自己判断で市販薬や残り薬を飲むのはやめましょう。
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おくすり手帳を活用して、主治医や薬剤師と情報を共有しましょう。
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腎臓を守る薬もあるため、主治医と相談して使っていきましょう。
腎臓病と薬の関係はとっても繊細です。
きちんと主治医と相談しながら薬を調整すれば、安心して生活できます。
腎臓をいたわりながら、薬と上手につきあっていきましょう。
