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第33回:子供と住むとコロナも軽症!? ~流行ってのっかるべき?~

[2022.09.15]

突然ですが、

 

「子供はコロナ感染による重症化が少ない」といわれていますが、なぜでしょう?

 

理由は未だはっきりはしていないようですが、一つの説として「子供は普段から風邪を引いているから」というものがあります。

 

そしてその説をさらに広げると、「風邪っぴきの子供と一緒に住む大人も重症化リスクが低いのでは?」とも考られます。

 

今回は、この「子供と一緒に住む大人は重症化リスクが低いのか?」を研究した論文が、米国科学アカデミーから発表されたのでご紹介します。

 

「子供と一緒に住む大人は重症化リスクが低い?」と考えられた経緯

先ほども書いた通り、今回の新型コロナ感染は子供の場合には「軽症のことが多い」といわれてきました。

 

その理由は未だ不明ですが、一つの説として「子供は”新型ではない”コロナウイルスによくかかっているから」という説があります。

 

ご存知の方も多いかと思いますが、”新型ではない”コロナウイルスは、一般的な風邪の原因ウイルスとして、そのへんをウロウロしています。

 

そして子育て世代の方ならよくわかるかと思いますが、子供はしょっちゅう風邪を引きます。

 

このコロナ禍においても、子供たちはふつうに風邪を引いてきます。

 

その風邪のいくつかは、”新型ではない”コロナウイルスによるものかもしれません。

 

この、”新型ではない”ウイルスへの感染によって作られた免疫力が、子供の新型コロナ感染重症化予防になっている可能性があるといわれているのです。

 

となると、”新型ではない”コロナ感染を持ち帰ってくる子供と一緒に生活している大人も、それなりの免疫を持っている可能性があるということです。

 

実際、私も二児の父ですが、子供からしょっちゅう風邪をもらって体調を崩してきました。

 

そして、その風邪のいくつかは”新型ではない”コロナ感染であった可能性があるということです。

 

どんな調査したの?

では、今回の研究をご紹介します。

 

米国カリフォルニア州における400万人以上の健康保険情報から、18歳以下の扶養の子供を持つ大人を抽出しています。

 

そして、以下のように大人をグループ分けしています。

 

基準グループ:0-5歳の子供と住む大人

 

グループ1:6-11歳の子供と住む大人

 

グループ2:12-18歳の子供と住む大人

 

グループ3:18歳以下の子供と住んでいない大人

 

 

それぞれのグループの大人が、基準グループの大人と比べて、どれくらいコロナ感染リスクや、入院・重症化リスクが高いかを調査したのです。

 

結果はいかに?

先程のグループ分けした大人の特徴(キャラクター)をお示しします(表1)。

表1:Risk of severe COVID-19 infection among adults with prior exposure to childrenより抜粋

 

ちょっと疑問に思いませんか?

 

それは、「大きい子供と住む大人(グループ1,2)や、子供と住んでいない大人(グループ3)は、小さい子供と住む大人(基準グループ)よりも、年齢が高い」のです。

 

たしかに、幼児の子供がいる家庭よりも、中高生の子供がいる家庭の親の方が年齢が高い傾向にあるでしょうし、さらには子供が成人した家庭の親は、より年齢が高いことくらい肌感覚でわかります。

 

そして、年齢が高ければ、糖尿病や高血圧などの持病(重症化リスク因子)を持つ大人も増えます。

 

そうなれば、基準グループと比べて、グループ1,2,3の感染リスクや重症化リスクも徐々に上がってしまうのです。

 

このまま何もせずに比較してしまうと、まさにその通りで、表2のように入院・重症化リスクが数倍に上がる結果となってしまうのです。

表2:Risk of severe COVID-19 infection among adults with prior exposure to childrenより改編

 

 

 

そこで今回の研究では、傾向スコアマッチングという統計的手法を使って、基準グループと各グループそれぞれで、大人のキャラクターに差が出ない状態に補正しなおして比較しました。

 

その結果が次のグラフです。

 

グラフ:Risk of severe COVID-19 infection among adults with prior exposure to childrenより改編

これをみると、「子供と住む大人は、(子供の年齢にかかわらず)若干コロナ感染しやすくなり、子供と住んでない大人は感染しにくい」ことがわかります。

 

これは、「大人の感染が、子供からもらうパターンが多いこと」が想像されますね。

 

しかし、感染後の大人の中でみると、入院リスク・重症化リスクは、グループ3(子供と住んでない大人)の方が、1.5-1.7倍も高くなっているのです。

 

つまり、「子供と住む大人はコロナをもらいやすいが、いざ感染すると、子供と住んでいた方が重症化しにくい」ということがわかります。

まとめ

今回の研究では、実際の抗体価や、ワクチン接種の有無など、調べていないことが数多くあります。

 

ですから、「子供が重症化しにくい理由が”新型ではない”コロナによく感染している」という説と、「子供と一緒に住む大人は重症化リスクが低のか?」という仮説は、必ずしも結びつけられないといえます。

 

ですが、コロナ前の別な研究結果によると、「学校の先生や親は子供と接触する立場になった直後に、風邪ばかり引く時期があり、その後少しずつ風邪が引きにくくなる」というデータがあります。

 

これは、子供と生活して様々なウイルスに暴露されることで、免疫力が上がることが考えられるのだそうです。

 

(たしかに、私も第1子が生まれて保育園に通い始めたころは、常に風邪を引いていました)

 

今回の”新型”コロナウイルス感染についても、「”新型ではない”コロナウイルスに暴露されていた人の方が、免疫力が高かった可能性がある」ということなのです。

最後に

感染症というものは、「流行させないために感染予防を徹底すること」、「感染後は適切な治療をすること」が重要と私も教わってきました。

 

しかし、ここまで一般的になり、かつ治る可能性の方が圧倒的に高い感染症にまでなると、その付き合い方を変える必要があるかもしれません。

 

つまり、「(副題にもある通り)流行にのっかる」ことも、一つの方法かもしれないのです。

 

今月からオミクロン株を含んだ2価ワクチンの接種が始まるということですが、ワクチン頼みの状況から次の段階へ進みたいものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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