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第27回:次は4回目が待っている!? ~コロナワクチン4回目接種について現時点でわかっていること~

[2022.04.01]

日本でも少しずつ4回目(ブースター2回目)接種の話が出ています。

 

米国では、3月15日にファイザー社が65歳以上の人へのブースター2回目接種の許可を米国食品医薬品(FDA)へ申請しました。

 

3月17日には、モデルナ社が18歳以上の人へのブースター2回目接種の許可をFDAへ申請しました。

 

そして、3月25日のニューヨークタイムズ紙によると、バイデン大統領は50歳以上の全員に対してブースター2回目接種を認める方針とのことです。

 

※ 結局、3月29 日にFDAは、50歳以上の人に対するブースター2回目接種(ファイザー・モデルナどちらも)を承認しました

 

1月にブースター2回目(ワクチン4回目)接種について書きました(第21回コラム(ブースター接種はこれからも続くのか? ~4回目接種に向けた議論の現状~))が、当時はまだデータも少ない中での議論でした。

 

その後少しずつ研究データが発表されてきましたが、現在でもブースター2回目接種一定の見解が得られていないようです。

 

果たしてブースター2回目接種は必要なのか、有効論と懐疑論の両側から研究結果をご紹介します。

 

ブースター2回目接種の有用性を示す研究①

まずは有用性を示す研究データです。

世界的にもワクチン政策の進みがとびぬけて早い、イスラエルからの研究(未査読)です。

 

イスラエルでは昨年末から、ブースター2回目接種が始まっています。

 

その対象者とは、ブースター1回目(合計3回目)接種から、4か月以上たった

①60歳以上の人

免疫不全の人

医療従事者

 

です。

 

そしてこの研究では、ブースター接種を2回をした60歳以上の人について調べたものです。

図1:Protection by 4th dose of BNT162b2 against Omicron in Israelより引用・一部改編

 

これによると、ブースター2回目接種後5-7日目までは、3回しか接種していない人と、ほぼ同等(1.0倍)の感染率でした(図1)。

 

しかし、ブースター2回目接種後8日目以降は、徐々にブースター1回しか接種していない人の方が感染率が高くなり、20日目頃に約2.3倍程度まで上がっています(図1)。

 

つまり、ブースター接種を2回行うと、1週間後くらいから効果が感染予防効果が出はじめ、20日目頃には、感染率は半分以下(1/2.3)まで下がるということです。

ブースター2回目接種の有用性を示す研究②

次に、3月24日に発表された同じくイスラエルからの研究データです。

 

60歳以上の合計56万人(ブースター接種1回:33万人、ブースター接種2回:23万人)という、大規模なものです。

 

図2:Second Booster Vaccine and Covid-19 Mortality in Adults 60 to 100 Years Oldより引用・一部改編

この研究は、ブースター接種後の感染による死亡リスクを調べています。

 

接種後40日まで調査したところ、ブースター1回接種のみの人は、232人が感染によって亡くなりましたが、ブースター2回接種した場合には、92人の死亡者だったとのことです(図2)。

 

死亡危険度を統計学に算出すると、ブースター2回接種した人は、ブースター1回接種の人よりも感染による死亡の危険性が5分の1程度(ハザード比0.22)だったそうです。

 

つまり、(短期間ではありますが)60歳以上の高齢者には4回目接種の有効性は高いといえるということです。

 

ブースター2回目接種は”本当に必要?”の研究

次に、ブースター2回目接種の有用性・必要性にやや疑問符がつく結果を示した研究データです。

 

これまたイスラエルから、医療従事者を対象とした研究データ(未査読)です。

 

これは、ブースター2回目接種をした医療従事者の中でも、感染リスクが高い(中和抗体価が低い)人を対象に調査しています。

 

図3:4th Dose COVID mRNA Vaccines’ Immunogenicity & Efficacy Against Omicron VOCより引用・一部改編

これによると、ブースター1回目接種(ワクチン3回目)4週後には、ワクチン2回目接種4週後よりも、中和抗体価が8倍以上高くなることが分かります(図3の青矢印)。

 

さらに、ブースター1回目接種(ワクチン3回目接種)16-20週後は、ワクチン2回目接種20-28週後よりも、やはり中和抗体価8倍程度高いことも分かります(図3の青矢印)。

 

以上から言えることは、

 

ワクチン2回接種よりは、ブースター接種を1回追加した方が、効果は8倍程度高くなる

 

です。

 

一方で、ブースター接種を更にもう1回追加した場合(ワクチン4回)接種した場合はどうでしょう?

 

ブースター1回目接種4週後の中和抗体価と比較すると、ブースター2回目接種後2週目あたりで、中和抗体価が1.5倍程度まで上昇しました(図3のオレンジ矢印)。

 

しかし、3週目になると、その中和抗体価が横ばい~やや低下に転じています。

 

つまり、ブースター2回目接種直後(3週目頃)は、弱いながらも抗体価の上昇を見込めますが、すぐに頭打ちになってしまいます。

 

結局、「ブースター1回目ほどの効果は、ブースター2回目では見込めない」と予想さるということです。

 

またこの研究では、ブースター2回目接種後のブレークスルー感染(接種後8日目以降の感染)について調査することで、実際のブースター2回目接種の効果を算出しています(接種後29日目まで)。

 

これによると、3回目接種と比較して図4のような効果を認めたとのことでした。

図4:4th Dose COVID mRNA Vaccines’ Immunogenicity & Efficacy Against Omicron VOCより作成

 

この数値をどう考えるかは何とも言えませんが、論文の主旨からすると、期待されたほどの効果ではなかった模様です。

 

さらに、ブースター2回目接種がデルタ株と比べて、オミクロン株にどれだけ効果ががあるかについても調べています。

 

これによると、ブースター2回目接種しても「オミクロン株に対する中和抗体価の上昇は、デルタ株に対する中和抗体価の上昇と比べて、上りが鈍かった」ということです。

 

つまり、「ブースター2回目接種によるオミクロン株に対する予防効果は、デルタ株に対する予防効果よりも弱い」といえるということです。

 

まとめ

以上のことを簡単にまとめます。

 

① ブースター2回目(ワクチン4回目)接種は、接種後1か月くらいまでは、感染予防効果はそれなりに上がる

 

② しかし、ブースター1回目(ワクチン3回目)接種した時ほどの強いブースター効果は得られない

 

③ 重症化しやすい高齢者にブースター2回目接種する意味はありそうだ

 

④ ブースター2回目接種のオミクロン株に対する効果は、デルタ株に対する効果よりも弱い

 

そして、3つ目にご紹介した論文や、ネイチャー誌には、以下のことが書かれています。

 

① 少なくとも重症化リスクのある人がブースター2回目を接種する意味はあるだろう

 

② 現存のワクチンを継続接種するのではなく、新たなワクチンが必要と考えられる

 

これらのデータを踏まえて日本でも、”ブースター2回目接種の対象者”、”ブースター1回目から2回目までの間隔”が議論されることでしょう。

 

しかし今回の研究データは、オミクロン株流行期に調査されたものです。

 

日本でブースター2回目接種が行われる時期に「どのような変異株が流行しているのか」、はたまた「コロナ感染自体どうなっているのか」はわかりません。

 

結局は、「その時にならないとわからない」というのが現実かもしれません。

 

ただ、これらのデータを見ていると、そろそろ今のワクチンの限界が見えてきているように思えます。

 

 

 

最後に…

 

現在、Bharat Biontechというインドの会社が点鼻型のワクチンの臨床試験中のようで、世界初承認となる可能性が高いといわれています。

 

また、Novavaxという米国の会社からの(mRNAワクチンではない)ワクチンは、変異株に対する効果が90%以上とされ、臨床試験中のようです。

 

※ Novavaxのワクチンは、日本でも昨年12月に武田薬品から承認申請が提出されています

 

次の変異株、感染波に向けて、新しい(技術の)ブレークスルーが生まれることを期待したいところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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