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第24回:ブースター接種はどちらのワクチンがよいの? ~ファイザーとモデルナの比較~

[2022.02.14]

日本でもブースター接種が急がれていますが、なかなか接種率が上がらず、「モデルナ控え」と呼ばれる現象が起こっています。

 

これは、「モデルナはファイザーよりも副反応が強い」という印象が強いことが一因のようです。

 

たしかに、1回目・2回目のときは、「モデルナ・アーム」や、「心筋炎」などの印象が強かったように思います。

 

しかし3回目接種については、まだ研究が進んでいないこともあり、「本当にモデルナは副反応が多いのか」はっきりしないのも事実です。

 

研究が進まない理由の一つに、3回目になると「ワクチンの接種パターンが多くなり、その検証が複雑になってくること」が挙げられのではないかと個人的には考えています。

 

実際、以下の表のように、日本で使われているワクチンだけでも、なんと(!?)6通りもの方法が挙げられてしまうのです。

 

これだけのパターンを検証するのは非常に難しいのもわかりますね。

 

今回は、その中でも日本で主流の”ファイザー”と”モデルナ”の接種パターンにしぼって、3回目接種時の副反応とその効果の違いを検証したいと思います。

 

ファイザーとモデルナ、ブースター接種の副反応にちがいはある?

 

まず、権威のある医学誌に発表された米国からの研究データをご紹介します。

 

表1:January 26, 2022 DOI: 10.1056/NEJMoa2116414より引用・一部改編

表1は、3回目接種したワクチンによる副反応の発生率です。

 

これを見ると3回目ワクチンが、モデルナであっても、ファイザーであっても、副反応の発生率に大きな違いはなさそうです

 

 

次に、1,2回目ワクチンの種類別にくわしく、3回目の副反応の発生率を調べています(グラフ1)。

グラフ1:January 26, 2022 DOI: 10.1056/NEJMoa2116414より引用・一部改編

これを見ると、3回目がモデルナだった場合、全体的に副反応の発生率がやや多いように見えます。

 

しかし、ここで一つ注意が必要です。

 

先ほど表1でご紹介した通り、「両ワクチンの副反応の発生率には大きな違いはなかった」はずです。

 

なのにグラフ2では、どう見ても3回目モデルナの方が発生割合が高そうに見えます。

 

これは、なぜでしょう??

 

 

じつは、グラフ1の発生割合は、”のべ”でカウントしています。

 

つまり、同じ人に複数の副反応が出ても、それぞれの症状ごとに”1つ発生”としてカウントしているのです。

 

ということは、3回目モデルナの人に副反応が多いように見えるのは、「同じ人が複数の副反応を認めた例が多かった」可能性が考えられます。

 

ですから、

 

「3回目モデルナの人の方が、3回目ファイザーの人よりも副反応が出やすいわけではなく、3回目モデルナで副反応が出てしまう人は、複数の症状が出やすい」

 

といえるのかもしれません。

 

ファイザーとモデルナ、ブースター接種の効果にちがいはある?

先程、ご紹介した研究から、効果についてのデータを見てみましょう(表2)。

表2:January 26, 2022 DOI: 10.1056/NEJMoa2116414より引用・一部改編

これを見ると、”15日目”も”29日目”も最も中和抗体価が高いのは、「1,2回目モデルナで3回目モデルナ」のパターンのようです。

 

但し、ここでも注意が必要です。

 

それは、表2の最下段に載っている2回目から3回目までの期間です(表3)。

表3:January 26, 2022 DOI: 10.1056/NEJMoa2116414より引用・一部改編

米国では、ファイザーワクチンの接種がいち早く始まっていたこともあり、1,2回目にファイザーを接種した人は、3回目まで約6カ月間(23-24週)空いています(表3の)。

 

一方、1,2回目にモデルナを接種した人は、遅れて接種した人たちであることもあり、約4か月(16-17週)後に3回目を接種できています(表3の)。

 

ワクチンの中和抗体は時間が経てば徐々に落ちていくことは、すでに良く知られています。

 

そのため、1,2回目ファイザーだった人と、モデルナだった人との間では、3回目接種の時点(1日目)で中和抗体価に大きな差ができてしまっています(表3の)。

 

となると、3回目接種時の出だしから中和抗体価に差がある、「”1,2回目ファイザー” VS  ”1,2回目モデルナ”」で比較しても、あまり意味がないといえそうです。

 

では、

 

「1,2回目ファイザーの人が3回目にどちらを打つと効果が高いのか?」

 

と、

 

「1,2回目モデルナの人が3回目にどちらを打つと効果が高いかのか?」

 

を考えてみましょう。

 

もう一度、表2(もしくは表3)を見ていただければわかる通り、どちらの場合でも「3回目モデルナの方が中和抗体価は高くなる」といえそうです。

 

 

 

 

次に、以前のコラムでも載せましたが)イギリス健康安全保障局からのデータを見てみましょう(グラフ2)。

 

グラフ2:UK Health Security Agency SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England より引用・一部改編

 

これによると、1,2回目ファイザー接種の人の場合、「3回目モデルナを打った方が、ワクチン効果は長持ちしている」ことが分かります。

 

以上より3回目の効果は、モデルナの方に軍配が上がると考えてよいでしょう。

 

 

まとめ

以上、長々と書きましたが、これまでの内容をまとめてみましょう。

 

・3回目の副反応の頻度は、モデルナもファイザーも大きな違いはない

 

・モデルナで副反応が出てしまう人は、複数の症状が出やすい可能性がある

 

・どちらのワクチンであっても、3回目は早めに打った方が中和抗体価は高くなる(効果は上がる)

 

・1,2回目のワクチンに関わらず、3回目はモデルナの方が短期的(約1か月)効果は高い

 

・1,2回目ファイザーの人は、3回目モデルナの方が中期的(約10週間)の持続効果は高い

 

こう見ると、3回目はモデルナも決して悪くありませんね。

 

いずれにしても、早く打てるワクチンをできるだけ早く打つことが重要ですね。

 

 

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